ロバート・オルドリッチ『ザ・ダーティ・ダズン』
邦題『特攻大作戦』も悪くないんですけども、原題がいいですなあ。
もともと、「ダーティ・ダズン」というのは、仲間同士で使う罵り言葉でして、例えば、アフリカ系のやんちゃな連中が仲間同士を「ニガー」と表現するようなものですが(私たちが日本人がそんなことをアフリカ系の人に言ったら半殺しにされますのでご注意を)、それと、「ダーティな12人」のダブルミーニングにしてるわけでよね。
オルドリッチさん、なかなかお茶目です。
古来、『水滸伝』や『白浪五人男』などなど、ピカレスク・ロマンというものは、定番なわけですけども、オルドリッチは、生涯にわたって、太々しい人物たちのぶつかり合いを痛快に描かせたら天下一品の監督でした。
今回のボーグナインは、マーヴィンに無茶な命令を下す少将。
本作もリー・マーヴィン演じる、能力は高いのだけどもいささか軍律からははみ出しがちな少佐が、特赦を受けた極悪の犯罪者を率いての極秘作戦。という、もう、アルドリッチ的としか言いようのない「男祭り」な内容です。
ルーディたちとの初対面
いうまでもありませんが、死刑執行間近の者が大半なので、軍からの命令は拒めません。
仮に失敗しても、面倒な少佐を陸軍から追い払うことができるし、囚人が逃げ出したり、揉め事を起こしたら、そのまま絞首刑にするだけです。
名監督カサヴェテスもココではチンピラ役。
ドナルド・サザランド(笑)。『M★A★S★H』での悪ふざけキャラはここで確立か。
うまく言ったら儲けもの。という、マーヴィンたちは圧倒的逃げ出したり不利な条件で訓練、任務を遂行しなくてはなりません。
アルドリッチはこういう逆境を描く事に定評がありますけども、そこが暗くなったり深刻にならないところがこの人の面白いところですよね。
日本のスポ根の暗さと、アルドリッチは私は本質的に違うものと思ってますが(悪知恵で相手を出し抜くことも是とするアルドリッチの考えはスポ根ではないですよね)、言うことをきかない荒くれ者たちが一致団結していく過程がやっぱり男の子にはたまらないですよね。
マンダム前のブロンスン。左のジム・ブラウンはアメフトのスターで映画初出演。右はジョージュ・ケネディ。
『七人の侍』は、いかにして野武士と戦ってくれる侍を集めるのか?に時間をかけましたが、本作は、荒くれ者たちをいかに短期間で訓練するのか?に時間をかけます。
マーヴィン、体を張って悪漢たちを鍛える!
ここでのすったもんだの過程が楽しいので一切カットです(笑)。
強いチームを育てるリー・マーヴィンの素晴らしさが満載です!
さりげないですが、軍隊というものがいかに人間を組織化し、コントロールしていくのか。ということもチャンと表現してますよね。
そこが描けているのがさすがです。
またしても身体を張って部下を守る!
マーヴィンの上官のロバート・ライアンは、損な役が多いよね。
そして、後半のナチス士官殺害作戦へとなだれ込む見事な構成。
仕事です。
しかし、ココもあえなく全カットなのでございます!
さあ、リー・マーヴィン率いる「ダーティ・ダズン」は任務を遂行できるのか?
それにしても、こんなに愉快痛快なピカレスク・アクション映画もありますまいて(笑)!!必見!!!
本作が、タランティーノ『イングロリアス・バスターズ』に及ぼした影響は大きいでしょうね。