ジョーセフ・ロウジー 『唇からナイフ』
とても引き締まった映画を撮るロウジーが、こんな鈴木清順の日活時代みたいな映画を撮っていたのは、まことに驚きです。
最近独立したマサラ国は産油国ですが、政情が不安定です。
イギリス政府は、マサラ国からの石油が欲しいので、ダイヤモンド5000万ポンドを政府に渡そうとしたのですが、事前に察知されて、爆殺されます。
そこで、すでに引退した、世紀の怪盗モデスティ様にこの任務を任せる事にしました。
シルクハットの大親分的なキャラ。
セクシー美女が大怪盗。というのは、峰不二子ちゃんにも継承されるキャラクターで、その典型です。
あっ、テーブルの上にマイルス『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』が(笑)。
音楽監督がジョン・ダンクワースでロウジー監督自身も奥さんがジャズヴォーカリストの、クレオ・レーンというだけの事は。
さて、そのダイヤを輸送中に横取りしようとしているのが、ダーク・ボガード。
お色気、サスペンスともに見事で、主演のモニカ・ヴィッティのケレン味たっぷり(しかし、それが全くイヤミにならない)な演技、ダーク・ボガードのイヤ〜なキャラクターともども、一切適当に作っている感じがない。
モデスティの相棒ウィリー。
いわゆるカルト映画という事にはなると思いますが、今見ても陳腐な感じがしないのは、さすがロウジーだと思います。