エリック・ロメール『冬物語』
四季を描いた四部作(ロメールは、こういう連作形式で描くのが得意です)の第二作目。
いやー、「夏の日の思い出」には勝てっこないですよ、そりゃ。というお話しです(笑)。
それじゃあ身もフタもないんで、もう少し説明しましょうか。
同棲までしていた図書司書のロイックと別れて、働いている美容院を経営するマクサンスとともに新たに美容院を開業して生活することにしたんですね。
しかし、どうもうまくいかないんです。
なぜか?
5年前の夏の日に出会った男性、シャルルの事が忘れられないんです。
シャルル
本当は連絡を取り合うつもりだったのですが、行き違いで、手紙が届かず、消息がわからなくなってしまいました。
もはや、いるんだかいないんだかもわからないシャルルへの思いが頭の中でドンドン大きくなるんですね。
それは解決不可能ではないですか(笑)。
恋というものは理屈ではない。
この「不可能なもの」の周りをコロコロの心変わりしてアッチへ行ったりコッチに来たりと、それに振り回される愚かなるロイックとマクサンスの2人。おバカ。
インテリのロイック
美容師のマクサンス
しかも、彼女の子供はその夏の日に出会った男性との間の子なのです(法律的に非嫡出子になっていろいろ困らんのですか、フランスの民法では)。
エリーズちゃん
しかし、そんな奔放な彼女に急転直下。
何が起きたかは言いませんが、その前のプラトンがチャンと伏線になってますね。
うまいなあ。
筋書きだけを見ると、恋多き女によるメロドラマでしかないんですが、ロメールはなぜかそうならないんですよね。
この人は面白さとかフレッシュさというのは、微妙なディテールの調整である事がよくわかっているのでしょう。
そういう達人のような境地で映画を撮っているのですね。
なので、見ると陳腐になりそうな題材もとても面白く見る事が出来てしまう。
ホン・サンスはこういう所をロメールからよく学んだのではないでしょうか。
国際的に特に有名な役者など一切使わず、制作費をそれほどかけなくたっていくらでも映画は面白くできるし可能性が狭まることなどない。という実践をロメールとホンはやっているのではないでしょうか。
ムダがなくて、貧乏臭くないんですよ、ロメールって。
でも、できてそうでコレができている監督は世界的にも実はそんなにいないのではないでしょうか。
シェークスピアも伏線です。