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なぜ、「ヒーロー」なのかは見てのお楽しみ!

ジャコ・ヴァン・ドルマル『トト・ザ・ヒーロー

 

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ベルギーの映画なんて、なかなか見る機会はないですけども、本作の監督、ジャコ・ヴァン・ドルマルは長編第1作で世界的な有名となりました。

 

私が彼の作品で初めて見たのは、『八日目』という、ダウン症の少年を主人公にした映画で、コレも面白かったのですが、本作はなかなかにエゲツない設定の作品です。

 

ある陰気なジイさんの回想というスタイルで始まるのですが、冒頭から病院が火事!

 

赤ちゃんが大変!

 

問答無用に観客を圧迫してきます。

こういう所で強引にグイグイと引っ張っていく強引さがイイですね。

 

そして、このジイさんを扱う看護師のぞんざいさ!

 

ジイさんは妄想の中で何度もこの看護師を殺しているようです(笑)。

 

隠れて老人ホームの個室でタバコを吸ってるこのジイさんも悪いわけですが、多分、そのくらいしか楽しみを見出せない環境に生きているのでしょう。

 

ある意味、ちょっとかわいそうです。

 

そんなジイさんが観客に告白する内容は、ナント、完全犯罪!

 

なぜ、このジイさんが殺人をしたのか?という事が本編なのです。

 

小林正樹に、『切腹』という、仲代達矢が延々と回想する、とんでもない作品がありますけども、アレは友人、そして、武士として没落した自身の名誉の回復のための切腹なのですけども、こちらはもう、完全なる逆恨みです(笑)!

 

ハンパではなく歪みきった粘着ジイさんの逆恨みによる殺人なのでございます。

殺されたのは、「アルフレッド・カント」という人です。

 

この基本設定が極端な所にあるので、このテの映画に必須なのは、やはり説得力です。

 

たしかに、このじいちゃんの恨みははらさでおくべきか!のレベルに達している!と、観客が思わなくてはならないわけですが、ドルマル監督の語り口は見事です。

 

さあ、どう語らせるのか。

 

という所までおよそ7分間なのですが、ここで初めて、タイトルのToto Le Herosが出てくるのですが、なんともうまいですよね。

 

もう、スッカリ心を掴まれてしまいます。

 

ココから、子供の頃にまで戻って話しが始まります。

 

ルフレッドは、なんと、同じ日に生同じ病院で生まれた男の子でした。

 

めちゃお金持ちです。

 

主人公のトマ(つまり、冒頭のあの陰気なジイさんです)は、ごくごく普通の家庭に育っています。

 

パイロットのお父さん、優しい母さん、おませな姉のアリス、トマ、ダウン症の弟のセレスタン。という家族の中で生活し、特に際立って不幸な生い立ちとは思えません。

 

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お父さんとアリス。

 

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お母さんとアリス、トマ、セレスタン。

 

妹と弟がどうやって生まれるのか。を語る所がとても可愛らしいですね。

 

先天的に知能の発達に問題のある弟を守るために、トマは一生懸命です。

 

しかし、その逆恨みの源泉は意外にもすぐに明らかになります。

 

あの病院の火事の日、同じ日に生まれたトマとアルフレッドはベッドが隣同士で、お母さんが間違えてしまったのだと。

 

しかし、トマの生活は基本的には幸せだったのですが、アルフレッドの父が経営するスーパーマーケットの開店のための仕入れをしている際に、父の運転する飛行機が墜落!

 

コレがトマの恨みその1です。メラメラ。

 

しかし、アルフレッドの父が経営するスーパーマーケットは地域にはなくてはならないもので、トマの家族はこんな事件がありながらも、使わなくてはないのですね。

 

ココがエグい!

 

それにしても、お姉ちゃんを演じる女の子は実に達者で妙に美女でコワいですねえ。

 

この姉のアリスがトマに与える影響はとても大きかった。

 

この頃の思い出がどうやらトマ老人には、もっともかけがえのないもののようですね。

 

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ココは見てのお楽しみとしましょう。

 

恨み その2です。メラメラメラメラ。

そんなトマも、大人になりました(ちょっと、マイケル・ブレッカーの若い頃に似てます)。

 

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どうやら、お母さんは再婚もせずに子供3人を育てたようですが、ある日、急に亡くなります。

 

青年になったセレスタンを演じているのは、『八日目』の主人公、パスカル・ドゥケンヌですね。

 

ドルマル監督、よほど彼の事が気に入ったのですね。

 

事実、この映画での彼のこと演技は見事という他ありません。

 

本作でも、ユーモラスな演技の素晴らしさがもう発揮されています。

 

さあ、だんだん回想と現在が近づいていき、トマが老人ホームを抜け出してアルフレッド殺害に向かいます。

 

街のシーンが完全に『ブレードランナー』していて、どこか寓話的です。

 

この映画、ジイさんの逆恨みという実に後ろ向きな題材なのに、どこか救いようがなく見てられなくならないのは、全体的にどこか寓話的で、どこかユーモラスなんです。

 

ココがこの監督の素晴らしい資質を感じますよね。

 

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「完全犯罪」について、子供からダンダンと回想していたはずなのですが、アレレレッ?というどんでん返しが。

とても素晴らしいおとぎ話でした。

音楽もとてもよかったです。

 

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実は。。