『オズの魔法使い』を見ると更に面白いです!

デイヴィッド・リンチワイルド・アット・ハート



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リンチの絶好調ムーヴィ(笑)。


老人フェチぶりも随所に!

とにかく、あらゆる意味でやりすぎな作品ですが、エルヴィスに移入しているニコラス・ケイジ

アタマの悪いローラ・ダーン

そのイカレた母親、マリエッタ。

で、ほぼ全員、オーバーアクト(笑)。

一見、サスペンスのような体裁を取るのは、いつものリンチ作品ですが、特に何も解決もしません。

悪そうなマルセロ・サントスの一味とか(ケイジはサントスの運転手だった事があり、一味によるルーラの父親の殺害の現場にいたようです)、そのボスである、「トナカイ氏」が出てきますが、一体何だかわからないうちに映画は終わります(笑)。

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ウィレム・デフォーは結局のところ、何のために出てきたのか、あんまりわかりませんし、ハリー・ディーン・スタントンの活躍場面は全くないと(笑)。

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でも、それがリンチでして、要するに変な人がいっぱいだよね、アメリカって。という事を言いたいんだと思いますけども(笑)。

それを、リンチとしか言いようのない映像美(今回は、やたらとSex and Violenceがストレートです)と統合不全を抱えるストーリー展開に惑わされ、はぐらかされているんですね。

言いたい事はシンプルだと思います。

一応、ケイジ扮するセイラーと、ローラ・ダーン扮する、ルーラ(ジーン・ヴィンセントの大ヒット曲「ビバップ・ア・ルーラ」から取ってるのでしょう)のラヴストーリーと言えばそうなんですけども、そこに、『オズの魔法使い』が下敷きになっているのが、独特なところです。

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つまり、マリエッタ=悪い魔女であり、ルーラ=ドロシーになっており、彼女とセイラー=エルヴィス・プレスリーが「幸せの黄色いレンガ路」を歩いて生きていけるのか?というお話です。

ちゃんと、よい魔女も赤い靴の踵を鳴らすシーンも出てきます。

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そういう、表面的にはほとんど出てきませんが、ドラックまみれのアメリカの1950年代の狂気を、独特の切り口で見せているわけですね。

だからこそ、ロックンロールのアイコンである、エルヴィスが主人公の1人なのです。

なので、この映画を見るに当たって、先でも後でもイイですから、『オズの魔法使い』を見た方がよくわかります。

悪い勢力がヴェトナム戦争経験者=60年代というのも興味深い。

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また、この2つの間をつなぐのは、オーソン・ウェルズ黒い罠』とロバート・オルトマン『ロング・グッドバイ』です。

ロックンロールとヴェトナム戦争と麻薬ですね。

ココにアメリカ文化の深層の闇を垣間見ることができますよ。

ほんの少しですが、ココ・テイラーが歌うシーンは必見!

今回、初めて気が付きましたが、チョイ役でジョン・ルーリーが出てます。

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