アレッ、コレ、どうつながってるの?

ホン・サンス『自由が丘で』

 
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なんと、角川の資本でホン・サンス
 
上映時間67分って、ホン・サンス史上、最も短い映画ではないのかと。
 
モリを演じるのは、加瀬亮
 
たしかに、ホン・サンスの作品に馴染みやすいですね、彼は。
 
タイトルは、なんと、韓国にあるカフェなのですよ。
 
「JIYUGAOKA8丁目カフェ」なのです。
 
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韓国から見た、日本のオシャレな町。として、自由が丘。が知られているのは、インターネットという時代ですなあ。
 
モリは韓国語が話せないので、会話の基本は英語です。
 
ココがすごいですよね。
 
そういう時代とも言えますけどもね。
 
モリが持っている文庫から、時代に関して話が展開していきますが、ヨーク見ると、その本は、吉田健一『時間』!
 
横道に逸れますが、吉田健一は、吉田茂の息子で英文学者で無類の大酒飲みでした。
 
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コレが吉田健一
 
大酒飲みが祟ってか、余り長生きしませんでしたが、晩年に猛烈にたくさんの小説やエッセイを書きまくり、その中でも傑作されるのが、『時間』です。
 
お読みになった事のない方は是非。
 
それにしても、ものすごく韓国語がうまいアメリカ人が出てくるのですが、こういう人、もうソウルに多いのでしょうかね。
 
ドイツのアンダーグラウンドシーンで活躍した、アルフレッド・ハルトがソウルに住んでいるらしいので、こういう事は珍しくなくなっているのかも。
 
今回はもうロケーションがかなり限定されていて、モリが泊まっているレストハウス鍾路区 桂洞81とあり、実在します)と「自由が丘8丁目カフェ」周辺だけで物語が進行します。
 
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モリはいつも寝坊ばかりしていて、朝ごはんを食い損ねていますね。
 
なので、朝ごはんがインスタント・コーヒーだけだったり、スイカだけになってしまいます。
 
登場人物は、ほぼ大卒ですね(英語が話せるので)。
 
アジアの大卒者で英会話ができないのは、日本人くらいみたいですが(笑)、それはともかくとして、スイカを食べながらのレストハウスのホストとの会話が興味深いですね。
 
ココで展開する時間論は、まさに吉田健一
 
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モリは、2年ほどソウルに住んでいた経験があり、日本語学校にで働いていました。
 
ここでの経験がこのお話の通奏低音になっているのですが、それはなかなか見えてきません。
 
その会いたい女性、クォンには、英語で手紙を書いており、その女性がモリの手紙を読んでいる画面(正確に言うとその手紙を読む手のみの場面)が場面の転換点として何度も挿入されます。
 
しかも、読んでいるのは、「自由が丘8丁目カフェ」です。
 
これまで見たホン・サンス作品の中でもかなりミニマルというか、ものすごく単調に作っています。
 
いつまでも会いたい人に会うことができず、しょうもなくセックスをしたり、ムダ話をしたりと、話しがほとんど滞留しています。
 
モリがトイレに閉じ込められると、クォンがようやくが動き出し、モリの泊まるレストハウスに向かいます。
 
コレ、単にすれ違っているのとも違いますよ。
 
モリはもう何日も前に手紙が届いて、レストハウスに滞在している事を知ってもらおうと待ち続けています。
 
しかし、その女性は、カフェで手紙を読んだ時間しか経過していないように見えます。
 
そもそも、2人の時間の経過がすれ違っています。
 
村上春樹もびっくりなコトになってますね。
 
ココから、ドンドンとあれれれれ?が連発していきます。
 
ココからは見てのお楽しみです。
 
こんなに短いのに、2時間の映画を見たような充実感があるのがとても不思議ですね。
 
私たちはホン・サンスの『時間』を見たわけです。