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またしてもポカン。と終わる。うまい。

ホン・サンス『ソニはご機嫌ななめ』


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ちょっとタイトルから、中年のおっさんが見るには勇気がいりますが(笑)、いつものホン・サンス作品です。

朝鮮戦争は、2016年の現在も、未だに和平条約が結ばれておらず、停戦協定のみであり、国際法上、戦争は終わっていません。

よって、大韓民国は、今でも徴兵制があります。

徴兵から逃れる方法は、大学への進学しかなく(よって、余り浪人もできません)、日本とは比べ物にならないくらいに、軍隊が近い社会です。

徴兵制は男性のみ2年間課せられます。

後、20年間が予備役です(出動命令があると兵隊になるという事です)。

ホン・サンスの描く作品は、その、大卒者の世界なので、そういう要素が欠落しています。

彼の作品のみを見て韓国社会を見ると、日本と似たような国なのかな?と誤解してしまいそうですが、実際は、もっとマッチョなんですね。

そういう、「じゃない世界」を描き続けているのが、ホン・サンスなのであり、そういう意味では浮世離れした作家ではあります。

なので、ホン監督の映画に出てくる男性には、マッチョが全くいません。

アレだけヒップホップが好きな国なのに(韓国はロックはアングラになりまして、メインはアイドルグループとヒップホップなんです)、そういう要素が一切なくて、そういう意味では、韓国の社会や風俗に、ホン・サンスはほとんど無頓着です。

そういう中でも、韓国独特のタテ社会、感情をストレートにぶつけるような表現など、やはり、コレは、韓国社会を示している事象は表現されてはいますね。

作風は全然違いますが、小津安二郎的です。

本作の主人公、ソニは、映画監督を目指すべく、海外への留学(ホン・サンスもアメリカの大学で修士号を取っています)。

でも、大学の先生からは、「現場で働きながら学ぶ方が、いいんじゃないの?」と諭されたりと、ちょっと迷いも出てきています。

ソニは元恋人で、コレまた映画監督の卵のような男と会う場面に出てくる「Hotsun」というお店は、実在するチェーン店のようです。


ソニがこの店から出てから流れる、ユダヤ音楽のクレズマーをベイスにした韓国の歌謡曲(この辺の知識が全くないです)が、妙に戦後直後の昭和20年代の日本の歌謡曲と酷似している事にギクリとします。

(これは、驚異の長回しとなっている別の2場面-とはいえ場所は同じですが-でもかかります)

このお話は、ソニとその元恋人ムンスを中心として、あたかも2つのパラレルワールドを見ているように展開していくのですが、ココでもデジャヴが多様されますね。

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ただ、SFみたいなパラレルワールドではなく、2人がたまたま出会って別れてから広がりる世界なので、両者は別世界になっているわけではなく、相互関係はあります。

ココでは、貴方の見られ方は、実は、そんなに多種多様というわけでないですよ。という事ですね。

また、人というのは、ある状況において、ある役割を演じているものなのですよ。と。

この話しの面白いのは、ソニが出ているとムンスが出てこず、ムンスが出てくるとソニは立ち去った後で、主要人物の4人が同じ画面に絶対に揃いません。

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ムンスを含めた男性3人は全員ソニの事が好きで、ソニは必ず個別にしか会わない形で物語が進み、男性同士はあるのだけども、男女間が1人ずつ会うので、パラレルワールドが2つのあるみたいなお話になってしまうわけなんですね。

こういう遊び心が常にあるのがホン監督の特徴です。

極端に少ないサントラ(2曲しかありません)も効果的ですね。

それにしても、ソウルは坂の多い街です。

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