ホン・サンス『ソニはご機嫌ななめ』
ちょっとタイトルから、中年のおっさんが見るには勇気がいりますが(笑)、いつものホン・サンス作品です。
徴兵から逃れる方法は、大学への進学しかなく(よって、余り浪人もできません)、日本とは比べ物にならないくらいに、軍隊が近い社会です。
徴兵制は男性のみ2年間課せられます。
後、20年間が予備役です(出動命令があると兵隊になるという事です)。
ホン・サンスの描く作品は、その、大卒者の世界なので、そういう要素が欠落しています。
彼の作品のみを見て韓国社会を見ると、日本と似たような国なのかな?と誤解してしまいそうですが、実際は、もっとマッチョなんですね。
そういう、「じゃない世界」を描き続けているのが、ホン・サンスなのであり、そういう意味では浮世離れした作家ではあります。
なので、ホン監督の映画に出てくる男性には、マッチョが全くいません。
アレだけヒップホップが好きな国なのに(韓国はロックはアングラになりまして、メインはアイドルグループとヒップホップなんです)、そういう要素が一切なくて、そういう意味では、韓国の社会や風俗に、ホン・サンスはほとんど無頓着です。
そういう中でも、韓国独特のタテ社会、感情をストレートにぶつけるような表現など、やはり、コレは、韓国社会を示している事象は表現されてはいますね。
作風は全然違いますが、小津安二郎的です。
でも、大学の先生からは、「現場で働きながら学ぶ方が、いいんじゃないの?」と諭されたりと、ちょっと迷いも出てきています。
ソニは元恋人で、コレまた映画監督の卵のような男と会う場面に出てくる「Hotsun」というお店は、実在するチェーン店のようです。
(これは、驚異の長回しとなっている別の2場面-とはいえ場所は同じですが-でもかかります)
このお話は、ソニとその元恋人ムンスを中心として、あたかも2つのパラレルワールドを見ているように展開していくのですが、ココでもデジャヴが多様されますね。
ただ、SFみたいなパラレルワールドではなく、2人がたまたま出会って別れてから広がりる世界なので、両者は別世界になっているわけではなく、相互関係はあります。
ココでは、貴方の見られ方は、実は、そんなに多種多様というわけでないですよ。という事ですね。
また、人というのは、ある状況において、ある役割を演じているものなのですよ。と。
この話しの面白いのは、ソニが出ているとムンスが出てこず、ムンスが出てくるとソニは立ち去った後で、主要人物の4人が同じ画面に絶対に揃いません。
ムンスを含めた男性3人は全員ソニの事が好きで、ソニは必ず個別にしか会わない形で物語が進み、男性同士はあるのだけども、男女間が1人ずつ会うので、パラレルワールドが2つのあるみたいなお話になってしまうわけなんですね。
こういう遊び心が常にあるのがホン監督の特徴です。
極端に少ないサントラ(2曲しかありません)も効果的ですね。
それにしても、ソウルは坂の多い街です。