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脱帽!!

ホン・サンス『3人のアンヌ』



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ホン・サンスについても本作についてほとんど予備知識ゼロで見ました。

韓国語と英語、時にフランス語が混じった映画で、違和感なくフランスの女優のイサベル・ユペールが出てるのが、結構驚きです。

日本の監督でこういう事をムリなくできる人って現役でいるでしょうかね。

会話に「ベルリン」「オーストラリア」とかが普通に出てきても、フジテレビ的な空回り感がない。

役者さん達も全然力んでないし、画面も気合入りまくってないです。

要するに、自然体に撮ってるんですね。

結構、いそうでいないタイプです。

どうしても、海外から有名人を呼ぶと、気合を出したくなるし、役者もはしゃぎたくなりますが、そうなってませんね。

ホン・サンス、もうそれだけで並ではございません。

カメラワークがちょっと変わってますね。

なんだか、ハンディカムをズームアップしてるみたいなチープさが、あんまり映画的な動きを感じさせません。

序盤でイイのは、ユペールが偶然出会ったライフガードの青年との会話。

英語をお互いに母語としていない状況でのぎこちない会話がなんともうまいですね。

ものすごく自然なんですね。

ライフガードのお兄ちゃんが即興でギターを弾きながら歌うのも、クサくないんですよね。

普通、こんな流れ、バカみたいに見えますけども、ホン監督が演出すると、確かにこういう風になりそうだなあと。

映っている映像はまごう事なき韓国であり、アジアなんですけども、なんというか、「韓国人離れ」しているというか。

一番近い感じは、ミカ・カウリスマキでしょうか。

彼も、「フィンランド人離れ」していて、どこへでも行って映画を撮り、結局、「カウリスマキ節」と言いますかね。

そういう、イイものを持っている気がしますよ。

しかし、更に面白いのは、この監督のお話を書いている私。という構造になっているんですね。

「私」が書いている脚本の内容をホン・サンスが映像として見せてくれているという。

憎たらしいほどうまい(笑)。

その「私」の書いた「アンヌ」というフランス人を主人公にした3つのお話しなので、こういうタイトルなんですよ。

どうですか。ほとんどフランス映画みたいな巧みな構成で驚きでございますよ(笑)。

登場人物はかなり重複していて、場面も同じです。

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しかも、似たようなセリフやシチュエーションがデジャヴのように出てくるのですが、お話としては別の話が展開します。

しかも、その話自体が、「という夢を見ていた」みたいに更にメタ構造になっていたりして、びっくりでございますよ!

実際は出会ってもいない人に夢の中であっていて、実際は夢の後に会っているとか(しかも、夢と同じシチュエーションであるのです)、よくそんな事を考え着きますな。

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とにかく、脚本が並外れてます。

たまげました。

こんなに面白いのに、90分くらいでサッと終わってしまうんです。
でも、ものすごく堪能できているんです。

もう、完全にやられました。脱帽です。

お洒落である。というのは、パリで撮影するとか、外タレが出てるとか、ものすごい美人が映っているとか、そういう事じゃなくて、「構造」の問題である(即ち、ファッションで言うところのモードを内蔵しているということ)。という事をキチンと提示できている稀有な作品であります。

こういう事ができているのは、作風は全然違いますが、鈴木清順くらいしか思いつきません。


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ライフガードのお兄ちゃんがMVPですね。