どこかB級感覚のある犯罪映画です。


ロバート・ワイズ拳銃の報酬



ハリウッド史上に残る『ウェストサイド物語』の前作がなんとコレ。

フィルム・ノワールだったんですね。

まあ、『ウェストサイド物語』も、プエルトリコ系の不良グループの抗争の話ではあるのですが。

とにかくいろんな映画を撮った監督です。

音楽を担当しているのが、なんと、ジョン・ルイス

MJQのリーダーで、当然、MJQの演奏も入っております。

人気絶頂にあった、ハリー・ベラフォンテが主演で、酒場でヴィヴラフォンを叩きながら(実際はミルト・ジャクスンの演奏だと思います)歌い、競馬で負けてギャングに借金を作っているようなしがない男を演じておりますが、不思議ですけども、どこか日活アクションを思わせるような雰囲気に満ちていて、素晴らしいですね。

とココまで書いておいてなんですが、実は「日活アクションっぽい」というのは反対で、日活がアメリカやフランスのフィルムノワールを独自に翻案して大量生産していたというのが正しいのですね。

昔の日活や東映のプログラムピクチャーは、主演が主題歌を歌うという、そして、それは映画の途中に必ず挿入されるという文化がございまして、この作品のハリー・ベラフォンテがやってるのは、自分が出資して、しかも主役なので、自分を目立たせるために歌手の設定にし、音楽監督をジョン・ルイスにしているという、ある意味、わかりやすい理由があるわけですが、どうも、コレが日本にわたると、主役が歌うことそれ自体がお約束になってしまいます。

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ハリー・ベラフォンテは、明晩までに借金を返さないと家族(正確に言うと離婚してしまった奥さんと娘)を殺すぞ!と脅されてしまったので、銀行強盗という悪事に手を染めてしまうのですが、もう一方の主演がロバート・ライアン

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前科者の失業者でヒモ。という状況をなんとかすべく、銀行強盗に。

ワイルドバンチ』では強盗団をやっていた頃の相棒のパイクを追い回していましたが、なんというか、過去に引きずられる役というのが、彼の1つの役回りなんでしょうかね。

ハリー・ベラフォンテ公民権運動などに積極的に活動するようになるのは、ご存知の方も多いと思いますが、この作品も白人嫌いの黒人と黒人嫌いの白人がいかにしてともに銀行強盗を行うに至るのか?という、当時としては余り扱われないようなテーマの映画でして(当時のアフリカ系アメリカ人には選挙権がありません)、そういう点も注目すべきでしょう。

元々、ロバート・ワイズは映画の編集を仕事としていた人なので、話の運び方にホントに無駄がなくて、これぞ教科書。というくらいにうまいですが、ワイルダーみたいな作家性にまで至っていないのがワイズがワイルダーほど高い評価受けてないところではありますが、この音楽と映像の合わせ方のうまさは、特筆すべき点であり、でなければ、『ウェストサイド物語』、『サウンド・オブ・ミュージック』という、MGM最後のミュージカルの最後の傑作を撮ることはなかったはずです。

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肝心の仲間同士がいがみ合いながら犯罪を起こそうというのですから、それはうまくいくはずもなく、強盗は失敗に終わります。

そんな彼らの末路は、なかなかブラック(笑)な最後でございました。

邦題から内容が一切想像できないのもB級っぽくてイイですね。

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