公開したばかりなので、絵なしです。

クエンティン・タランティーノ『ヘイトフル8』


タランティーノ作品は、すべて見てますが、本作は、セルジオ・レオーネマイケル・チミノをに三日三晩煮詰めて10倍ぐらいの濃さになって、3時間で吐き出したような唖然とするような作品でした(笑)。

ストーリーは、ものすごくシンプルなのですが、この内容をこんなに長時間をかけて撮るタランティーノの異常なまでの執念に改めて驚きました。

彼の作品が長いのは、もう、そんなに驚かないし、バイオレンスは、ハリウッドの監督ではトップクラスの厳しさがあることには、過去の作品を見ているのでビックリはしませんでした。

一番驚いのは、アノ、既成の曲を使うのが大好きなタランティーノが一切使わずに、エンニオ・モリコーネ(とうとう、アカデミー賞を受賞!)を起用したことですね。

どういう考えからこうなったのかは、一切、予備知識なしで見ましたらわかりませんが(レオーネ大好きなので、使いたかっただけという気がしますが)、正直、そんなによくはなかったです。

特に必然性は感じなかった。

この映画は、あらすじを説明しちゃうと面白さがかなり落ちますから、一切しゃべりませんが、中心となる筋立てそれ自体は、意外ですが、アキ・カウリスマキの若い頃の映画に似てると思いました。

この映画をカウリスマキが撮ったら、多分、90分もかからないのではないでしょう(笑)。

うまく省略すれば、トトトトンと転げ落ちるように進む、不条理劇だったと思います。

しかし、タランティーノはそこにあの、セルジオ・レオーネのタップリ感とチミノの容赦なさをぶち込んでくるので、なんとも異様なんですね。

しかも、省略がない。

敢えて、不条理劇の全過程を包み隠すことなく見せちゃうんですね。

コーエン兄弟も不条理大好きですが、こんな執拗な撮り方はしませんね。

もっとドライです。

多分、タランティーノのあの作品の長さは彼独特のサービス精神なんでしょう。

レオーネとチミノは、散々妄想とかロマンチシズムが爆発してしまうので、作品が長くなってしまうのですが、タランティーノは、自分がトコトン愛するものとかこだわる事を見てもらう、または、見せる事が作家としての誠実さなのだ。思っているがゆえに、長くなってしまう点が違っています。

ココがダメな人には、タランティーノは多分、受け入れられないでしょうね。

前作はジェイミー・フォックスを主役にした怒涛のマカロニ・ウェスタンで、黒人差別問題を独特の感覚(70年代のブラック・ムーヴィーへのリスペクトかもしれません)で撮った、これまた長い作品でしたが(笑)、今回は、そこに黒人差別問題だけでなく、北部と南部の白人の対立、メキシコという隣国もさりげなく取り込んでいて、それが話に膨らみを与えています。

まあ、タランティーノ好きな方は、呆れながらも、結局はすげえな。という映画です(笑)。

ちなみにいうと、タランティーノは映画館で見た方が面白いです。コレは確かです。

特に、室内撮影は、ホントに見事です。

わざわざ70mmのフィルム撮影をした意味がわかります。

なので、3時間近い話しの大半が室内なのにダレないのは、この巧みな撮影、照明、美術のスタッフが優れているからです。