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たけちゃんのツヤツヤぶりを見て欲しいですね!

大島渚『Merry Christmas, Mr. Lawrence』

 
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日本軍のキャスティングがすごいです。
 
 
そりゃ、イギリスに負けるわけですね(笑)。
 
原作は、この映画でもメインキャストになっている「ローレンス中佐」である、ローレンス・ヴァン・デル・ポストです。
 
当時、イギリスの植民地であった、南アフリカで生まれているので(つまり、ボーア人ということですね)、こんな、オランダ風の名前の英国人なのです。
 
坂本龍一演じるヨノイ大尉は、明らかに、三島由紀夫がモデルですよね。
 
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インテリでエリートでゲイで、妙に整った短髪で真剣で稽古をしたりと。
 
2.26事件の陸軍青年将校の決起に参加できなかった事を無念に思っているあたりもそうですね(セリフから、皇道派の将校であることがわかります)。
 
大島渚は1932年生まれですから、三島由紀夫とはほぼ同世代と言ってよいですが、彼の事をどう思っていたのでしょうね。
 
三島と坂本龍一には直接の面識はないと思いますが、実は、お父さんが三島由紀夫の担当をしていたことがあるんですね。
 
しかし、三島的な美学(大島の創作意欲の源はこれに対する強烈なアンビバレンスなのではないでしょう)とイギリスの合理主義の相克。という極めてガチなテーマなのに(それを客観的に見つめるのが、南アフリカ生まれのローレンス中佐という構図です)、そこにビートたけしが入り込むと、かの『スーパーTVジョッキー』の名物コーナー、「ガンバルマン」に見えてしまうという脱構築が、日本人には起きてしまいますね(番組が始まったのは、1983年の1月で本作の日本公開は5月です)。
 
朝鮮人切腹シーン(大島が追求している「朝鮮人」と「儀式」という二大テーマです)という、極めて大島渚を象徴するシーンでのハラ軍曹の介錯が、まるで、たけし軍団の面々が無様なリアクションをしているのを、ビートたけしが「このバカ野郎(笑)!」と巨大な手の形をしたハリセンで見事なタイミングで頭をどつくのと被ってしまい、脱構築が起きてしまっているというか(笑)。
 
その意味で、この作品をどこかおかしくしているのは、坂本龍一の素人演技ではなくて、明らかにビートたけしなんですね。
 
 
内田裕也乱暴狼藉は夙に有名で、それが樹木希林とのほぼ無期限の別居生活になっているわけですが、しかしながら、彼のアクトは、「悪い日本軍将校」を超える役割ではありませんので、見る側をハラハラドキドキはさせません。
 
これに対して、ビートたけしはローレンス中佐やヨノイ中尉らと絡む、重要なキャラクターなのですが、彼は役者をやっているというよりも、ビートたけしまんまであり、「THE ガンバルマン」で、たけし軍団に無茶な散々無茶な事をさせている時の振る舞いと全く同じにしか見えないのが、飛び抜けて浮き上がるんですね。
 
大島渚も、彼に演技は求めておらず、そのまんま振舞ってもらいたかったのだと思いますが、それじゃ、捕虜収容所が「The ガンバルマン」や「お笑いウルトラクイズ」にしか見えなくなるんですよね、ファンとしては(笑)。
 
この見方は、当初は日本だけのものだったと思いますが、欧米でも、北野武がお笑い芸人として、何をやってきた人なのかは、シネフィルの間ではかなり知られてきているはずなので、この見方は、日本だけのモノでは最早なくなりつつあると思います。
 
良くも悪くも、コレは1983年の映画なんだなあ。という事を改めて痛感してしまいます。
 
しかし、こういう危うい破綻を抱えているにもかかわらず、この作品が素晴らしいのは、本作で天使キャラを演じている、デイヴィッド・ボウイですよね。
 
何のシーンかは、余りのネタバレなので言いませんが、やや迷走気味になっている話の展開を何だかうまくまとめてしまう役割を果たしてます。
 
それにしても、本作はタイトルがホントに秀逸だと思います。
 
多分、大島渚作品の中でもピカ一かもわかりません。
 
ハラ軍曹が、クリスマスに酒で酔っ払いながら、勝手に(実は、ヨノイの意図をチャンと汲んでの行動ですが)ローレンス中佐とボウイ少佐を釈放した時に、思わず言った戯言が、本作のタイトルですからね。
 
よって、本作は、邦題ではなく、原タイトルで呼ばないと意味をなさないのです。
 
本作の素晴らしさは、畢竟、あのビートたけしの戯言。であることであり、そこに感動します。
 
大島渚ビートたけしを起用したのも、ほとんどこのためだったのではないか。とすら思います。
 
ラストシーンにローレンス中佐(今見ると、安倍首相にしかだんだん見えなくなってくるのが困りモノです)に対して、たけしが言うシーンよりも、こっちがいいんですね。
 
とても不思議な味わいの映画で、コレを持って大島の代表作とするにはちょっと座りが悪いですが、とにかく、見る価値は充分にあります。
 
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