天才モリタのデビュー作ですが、この人は最初からぶっ飛んでますなあ。
主人公は冴えない落語家、志ん魚(しんとと。と読みます)ですが、この空っぽな喋り方は一体なんであろうか。
しかも、微妙に噛み合わない。
この主人公の喋り方が映画に妙なリズムを与えてますよね。
いきなり風俗シーンとか(この頃はまだトルコ風呂!歯ブラシががデカい!)、極端に奥行きのない構図の多様とか、意図的な文法破壊が見られます。
全く関係のない2つの出来事が同時進行していて、それぞれの場面にまた関係のないものが映り込んだり、画面とサントラ画面と全く合っていなかったり(唐突に『スペースインベーダー』の音が挿入されているけども、それは画面とは全く関係なかったりします)。
主人公の所属する、落語家一門の、なんとも締まりのない、青春馬鹿群像を全く独特の語り口で、何の事件もないし、悲劇も喜劇もない。
この頃のファッションを見て欲しいですよ(笑)。
今見ると、意外とシマラーに見えなくもない(笑)。
秋吉久美子演じる風俗嬢と志ん魚が卓球しているシーンの冒頭の構図が完全におかしいです。
とにかく不思議なテンポ感でドンドン見せていく、ホントにユニークな映画で、他の誰とも似てませんね。天才の所業でしょう。
80年代初頭の日本を、これほど見事に描写した映画というものは、ちょっとないんじゃないでしょうか。
団地がこんなに生き生きと(笑)。
天気予想でこんなに盛り上がってるんですからね(笑)。
志ん魚が夜中の葛飾区から台東区へ歩いて帰りながら、心の中で町並みを解説するシーンは素晴らしい。
この映画に出演している方の多くが今では芸能界のベテランになっているんで、この映画ですら、もう名作に入りつつある事実に愕然としますね。