若尾文子、こわい(笑)!
しかし、これぞ女のホンネ!!
清々しいです!!しかし、やはりこわいです!!
薬学部に通っている貧乏学生であったあややが、ゼミの助教授のマッチョなおっさんに無理やり結婚されられたあややが、旦那の趣味の登山に付き合うことになったのですが、そこに川口浩演ずる製薬会社の男(助教授に薬の開発を依頼しているんですね)といっしょに登ることになりました。
しかし、助教授が足を滑らせてしまうんですね。
夫婦が宙釣り。大変なことになりました。
アメリカ映画だったら、ココが大変盛り上がるわけですが、増村はそこから始めないんですね。
いきなり裁判から始まります。
いままでの経緯は、サクッと裁判や回想でうまいこと挿入して、時間を節約します。
相変わらずうまいですねえ。
なぜ、裁判なのか?
それは、あややが、ナイフでザイルに切ってしまい、旦那は落ちてしんでしまったからですね。
つまり、あややに殺意はありやなしや?という裁判なんですね。
緊急避難なのか、殺人なのかが争われているんですね。
そこで浮かび上がってくる、助教授のマッチョぶり。彼の内面が一切描かれていないところが増村らしい見事な省略です。
ココをジックリ描いてしまうと、『飢餓海峡』ですね。
ジックリ描いてるのは、あややですね。
女のホンネ。しかも、かなりコワイ本音をここまでストレートにやりますか?というくらいに増村=若尾のコンビが見せますね。
一般男性代表として演じている、川口浩のラストから、
「えええええええ〜ッ……」
という、松本人志がしばしば使う、フレーズが完全に画面から伝わってきますね。
こんなにコンパクトに「男性優位社会」を見事にボコり、女性というもののホンネとそのコワさを見事に切り取った映画が、なんと。1961年の大映から発表されたのは、驚きです。
増村は、若尾文子を起用する場合は、かなり、異様なシチュエーションの作品ばかりやらせていますが(『刺青』、『卍』のような谷崎原作ものや、『赤い天使』のような極限状態を敢えて選んでいるフシがありますね)、若尾は、増村のかなり厳しい要求に応え、見事な仕事を残していますよね。
結局、男たちは、あややの魅力にヤられてしまうんですね。という、名作です。
女性側の意見も聞いてみたいものです。