谷崎潤一郎のドロドロを見事に編集して見せる手腕

増村保造『刺青』。


これまた谷崎潤一郎作品(なんと、1910年の発表です)の映画化で、若尾文子主演、新藤兼人脚本の黄金のトライアングルであります。

また、特筆すべきは日本映画の国宝といってよい、宮川一夫の撮影です。

大映で名だたる巨匠が撮りたがったのも、宮川一夫がいたからというのは大きいと言われるほどの人で、谷崎の倒錯した世界に見事な説得力を与えています。

ちょっと前だったら、溝口健二が撮っていそうな題材ですが、それを引き継いでいると目されたのが増村ということで、彼がガピンから如何に信頼されていたかがわかります。

独特の暗い色調の中で、あややの着物やお肌がヌラヌラギラギラと映えるように撮影してますね。

エロいですね〜、こわいですね〜。

キワモノ寸前で成立させてますね。見事です。

ちょっと前だったら、溝口健二が撮っていそうな題材ですが、それを引き継いでいると目されたのが増村ということで、彼がガピンから如何に信頼されていたかがわかります。

増村は、江戸を撮ろうと、やっぱり痴情のドロドロはスッパリ切り捨ててスッキリと見せます。

人物で目一杯な構図は、宮川一夫になろうとも貫く、増村演出!

この常にギュッと詰まった構図が与える圧迫感が、この異様な題材とホントに合ってます。

なぜ、あややが拘束されて挙句に刺青を入れられるハメになったのか。が、冒頭、何の説明もなくゴロンと始まり、ものの30分もかからず、冒頭につないでしまう手際のよい演出と脚本がすごい。

橋本忍だったら、それだけで怒涛の2時間でしょう(笑)。

この余計なコトを一切しない感じが、今見てもとても気持ちがいいんですよ。

それが、変態作家谷崎の倒錯を見事に編集しているといいますか。

こういう事が今の日本の映画でほとんどできていないのが、ホントに残念でありまして、私は増村保造こそが、ジャパン・クールなんじゃないのかと言いたいですね。

こういう作品にリアリティを持たせるのは、主演の女優なわけですが、若尾文子以外には考えられないですね。

ヤクザの策略で遊郭の女に転落してしまった女を見事なまでに太々しく演じております。

自分の欲望に正直に生きる女性をやらせたら、天下一品ですね。

成り行きとはいえ、三人も殺してしまう新助はカワイソス(笑)。

そして、ラスボス、佐藤慶(笑)!

しかし、このお話の最高のド変態は、ご自身でお確かめを。

しかしまあ、登場人物がほぼ悪党と変態というのも清々しい。

イタリア映画並みのドロドロをスパッと80分でカタをつける快作。

ちなみに、原作は「しせい」と読ませますが、なぜか、この映画では、「いれずみ」と読ませます。

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