オルトマンの久々のハリウッド作品で、なんと、カンヌで監督賞、主演男優賞を取ってしまった痛快作。
『ポパイ』の惨敗でハリウッドから完全に干されながらも、ヨーロッパで映画を作ったり、テレビドラマを作っていたので、実は全然ヒマを持てあまりしていたわけではないオルトマンが、満を持して放った作品は、なんと、オーソン・ウェルズへのオマージュにして、ハリウッドに一発かます。という、全く衰えを見せていない事に見終わって驚きましたね。
この映画が公開された頃に、私はオルトマンの事を知って、徹底的に戦争をこき下ろした、『M★A★S★H』の事を知って、レンタルで借りて見ましたなあ。
高校の頃でした。
当時は、函館市に住んでましたから、オルトマンの映画なんぞ映画館にはかからないし、ビデオになってもレンタルもないしで、見ることができないまんま、すっかり忘れてしまいました(笑)。
まあ、オルトマンの映画はほとんどレンタルで見ることはできない状態ではありましたよね、最近まで。
で、最近、オルトマンのドキュメンタリーを見て、俄然、見てない作品が見たくなってしまって。
いやー、すごいです。
復帰おめでとう。みたいなご祝儀、一切不要な絶好調ぶりが、逆に恐ろしいほどよくできてきて、70年代の傑作群の後に並べても何の遜色もないどころか、もっと、作り方が巧みになっていて、非常に狡猾で、たくましくなってますよね。
70年代のオルトマンは、時代もそうでしたけど、ちょっと哀愁があって、とても切なくなりますが(『ナッシュビル』のあの終わり方はショッキングであるとともに、どこか心の中で泣いているオルトマンがいますね)、本作は、オーソン・ウェルズの最後の作品である、『フェイク』を見終わったような、ヤラレタ!という感じかしました。
延々と続くワンショットの最後に主人公グリフィンへの脅迫。
見事でした。
この作品、キャメラがとても変わっていて、まるで、全編が隠し撮りしているような構図でワザといやらしく撮られていて、「あんさん達、やっぱり、ハリウッドセレブのゴシップが大好きなんですねえ。じゃあ、こんなんどうですか?」という按配で見せていくんですね。
全く食えない人ですよね、オルトマンは。
しかしまあ、芸能界というは、とてもではありませんが、善人ではできませんね(笑)。
ドキュメンタリーでも、「実際はもっとひどいよ」とオルトマンが話してるくらいですから、よっぽどの欲望の都なのでしょうね。
しかし、キャメオ出演しているハリウッドセレブの数がハンパではありません。
ちょっと見ただけで、シェール、マルカム・マクダウェル、ピーター・フォーク、ジャック・レモン、エリオット・グールド、ジェフ・ゴールドブラム、スーザン・サランドン、スコット・グレン、バート・レイノルズ、ジョン・キューザックなどなど。
劇中で制作されているアホアホ映画(なんで、殺人ガスが出てる部屋にブルース・ウィリスが果敢に入っていって、なんともないんですか・笑)に、ジュリア・ロバーツとブルース・ウィリスが出てるのも笑えました(それぞれ、『プリティ・ウォマン』、『ダイ・ハード』というバカ当たりをした後です)。
サスペンスが最後にそんな形で終わるのか?というオチにも、参りましたと降参するしかないですね。
これ以降、オルトマンは、ハリウッドで映画を亡くなるまで撮り続ける事が出来、ホントに幸せな人生でした。