オーソン・ウェルズの望む形で公開できたのは、なんと死後。というまたしてもいわくつきの作品。
この作品をもって、オーソン・ウェルズはハリウッドと決別し、以後は、ジプシー監督/俳優として、世界中を放浪することになる。
そういう呪われた逸話も今となってはハリウッドの伝説の1つであります。
初めて見たときは、圧倒的にすごすぎて何が何だかわからないが、とにかく興奮するばかりであったが(笑)、改めて冷静になって見てみても、異様な興奮を与える作品であることは変わらなかった。
映画史に残るであろう、冒頭の延々とワンショットが続く犯罪シーン。
極端なほどコントラストをハッキリとさせた白黒の画像の見事さ。
今見ても驚くようなアングルと恐ろしくスピーディな編集の積み重ね。
まるで巨大な怪物のような風貌のオーソン・ウェルズの圧倒的な怖さ。脆さ。
メキシコ人のヤクザの親分をウェルズ扮する警部が殺すシーンの怖さと言ったら、例えようがない。
サントラがキューバ音楽とロックンロール、R&Bが中心というのもかなり変わっているが(リーゼント、革ジャンのメキシコ人が悪役という斬新さ)、キューバ音楽をサスペンスシーン使うという発想は、今考えてもかなり珍しいのではないか。
チャールトン・ヘストン、ジャネット・リー、マレーネ・ディートリッヒ、ザザ・ガボールといった錚々たるスターが出演したウェルズの自信作だったが、公開直前に彼に追加シーンを加えられたり、編集されたりという無惨な状態にされて公開された事で、興行的には惨敗してしまった。
『市民ケーン』と並ぶ彼の代表作といってよい本作を是非ともご覧ください。