正義の人、シドニー・ルメットの傑作。
アル・パチーノは70年代に当たり役が多いが、これも代表作と言っていいでしょう。
刑事モノだが、テーマは犯人を逮捕する内容ではなく、ニューヨーク市警の腐敗。
闇賭博を見逃す代わりに、警官たちに一定の金額を払う。などの腐敗が、トコトンまで行き渡っていたわけです。
セコいところでは、駐禁のキップを見逃した代わりに、タダ飯を食わせてもらうとか。
ストーリーを説明するとこれは全く面白くないので極力避けますが、当時の、ベトナム戦争で荒んだニューヨークの街並みがホントに生々しく、セルピコがこのゴッサム・シティのような街に溶け込むために、これまた生涯でもっとも荒みきっていたであろう、エリック・クラプトンのようにヒゲぼうぼうで、ヒッピーみたいな格好で潜入捜査をしている姿が、すごくイカしてました。
キャメラも敢えて汚く見せていて、とても臨場感がありました。
70年代のアメリカ映画は、こういうところがたまらなくいいんですよね。
これ、最後まで見ると分かりますが、なんと、実話に基づいています。
実際のセルピコは、腐敗の事実を公表して間もなく警官を辞めて、ヨーロッパに移住してしまったのでした。
ちなみに、移住先は、ティナ・ターナーと同じです。
彼女もアメリカが嫌いになってしまって、移住したとか。
しかし、シドニー・ルメットは、ホントにブレない監督でしたね。
アメリカの良心でした。
追記
フランク・セルピコは、現在はアメリカに戻っているそうで、2015年現在も存命しています。