「後味悪い映画」の中でもコレは相当な上位なのではないか。

野村芳太郎『疑惑』 おなじみの、野村芳太郎の松本清張映画ですが、今回の見どころは、なんと言っても、桃井かおりと岩下志麻のぶつかり合いですね。 バディものでもライバル対決でもないという、かなり異色のドラマです。 というのも、桃井かおりは富山県の…

今村昌平が蘇ってきたような濃厚なドラマでした!

イ・チャンドン『oasis』 2002年の作品で、『シークレット・サンシャイン』の前作です。 この監督は一作ごとの入魂の度合いがハンパではなく、それが寡作にならざるを得ない最大の原因ですが、本作の入魂度は、1960年代の今村昌平に匹敵する凄さがあります。…

サム・ペキンパーもビックリな凄絶な戦争映画です!

岡本喜八『血と砂』 経営が傾いてきた東宝を救うべく、三船敏郎は、三船プロダクションを設立し、数百人の従業員を抱える経営者となりました。 コレが、時間拘束がとても長い黒澤明との仕事を困難にしてしまった。というのが映画評論家春日太一氏の説ですが…

内田吐夢の怒りが見事な様式美に昇華した快作!

内田吐夢『浪速の恋の物語』 とにかくね、後半がすごいの。 タメにタメまくった飛脚問屋の婿養子である、中村錦之助の鬱憤が大爆発。 近松門左衛門の『冥途の飛脚』などを原作とした、この頃の内田が連作していた作品の一つなんですけども、どうも評価されて…

ゴダール初期の怪作!

ジャン=リュック・ゴダール『女は女である』 すんごい(笑)。 こんなに音楽というものが出鱈目に貼り付けられている映画というものがあるのだろうか。 私はゴダールの作品を20本も見てないと思いますが、こんな素朴な疑問がムツカシそうなゴダールを批評し…

3作すべて見ることをオススメします!

アッバス・キアロスタミ『そして人生はつづく』 『友だちのいえはどこ』の撮影を行ったコケル周辺が1990年に、大地震の被害を受けました。 なんと、死者は約3万人以上! その安否を確かめるために映画監督(キアロスタミではなく役者が演じてます)とその息…

まるで松竹映画見ているようであった。

アッバス・キアロスタミ『オリーブの林をぬけて』 『友だちのいえはどこ』に感銘を受けたので、早速次々作(実際にはドキュメンタリーを劇映画の合間にも撮っているので、正確な言い方ではない)を見ました。 なんと、またしても舞台は同じコケル。 映画監督…

とにかく見せ方のうまさに感心しました。

クレイグ・ギレスピー『アイ、トーニャ』 正直、そんなに期待して見たわけではないんですけども、コレがめちゃくちゃ面白かったですね。 ナンシー・ケリガン選手が、リレハンメル・オリンピックの直前に何者かに殴打された事件は、まあ、大々的に当時騒がれ…

ベルイマン的な抉りのすごい映画を久しぶりに見ました!

イ・チャンドン(李滄東)『シークレット・サンシャイン』 寡作な監督なので、実は全く知らない監督でした。 新作の『バーニング』(なんと、原作は村上春樹の中編です)の前々作で、2007年公開です。 イ監督は、脚本家、小説家、プロデューサーでもあるので…

アクションなしでもフリードキンはすごい!

ウィリアム・フリードキン『真夜中のパーティ』 ハリウッド映画で、恐らくは真正面からゲイをテーマとした最初の映画。 あの大傑作『フレンチ・コネクション』の前年に公開されたのが本作というのが驚きですねえ。 70年代のフリードキンは、まさに絶頂期と言…

タヴィアーニ兄弟+戦前の小津安二郎=アッバス・キアロスタミ

アッバス・キアロスタミ『友だちのいえはどこ?』 コレはホントにうまいなあ。と見ていて何度も唸りましたね。 タイトル通りの内容が展開していく、90分に満たない短い映画なんですけど、8歳の少年には、自分の住んでいる集落コケルから隣の集落のポシュテの…

B級感覚が戻ってきたイーストウッドの痛快作。

クリント・イーストウッド『運び屋』 ※公開直後ですので、写真はナシです。 現在、88歳のイーストウッドが久しぶりに自作の主演に復帰して撮ったのは、90歳の麻薬の運び屋。をモデルとした作品。 イーストウッドは、昔から大学教授や写真家という、どう見て…

久々のウディ・アレン監督、主演!!

ウディ・アレン『ウディ・アレンの6つの危ない物語』 あらかじめ断っておきますが、本作は映画ではなく、アマゾンプライムでしか見ることのできないドラマでして、一本が大体25分くらいで、タイトル通り6作からなります。 久しぶりにウディ・アレンが主演を…

ノーザン・ソウルを知らなくても充分楽しめる青春映画の逸品!

エレイン・コンスタンティン『ノーザン・ソウル』 鬱屈したイングランドの街。 面白かった! 最高でした! ソウルへの愛に満ちた傑作!! 1970年代の、財政が慢性的に悪化して経済が停滞しまくっていたイギリスのドンヨリした感じがホントに素晴らしかった。…

山中貞雄と並ぶ夭折が惜しまれる監督の傑作にして遺作!

ジャン・ヴィゴ『アタラント号』 奇しくも山中貞雄と同じ年齢で亡くなっている、ジャン・ヴィゴ。 長編映画をたったの1本だけ遺して、わずか29 歳の若さで亡くなったジャン・ヴィゴの傑作。 2017年に娘のリュス・ヴィゴらの協力によって4K修復が行われ、そ…

フリードキン監督の傑作がようやく完全版で見ることができました!

ウィリアム・フリードキン『恐怖の報酬 完全版』 いやー、大感激しました! 本年見た映画でコレがでベスト。 コレまで、監督の意図された形での上映はなかったので、新作とみなします。 ニトログリセリンの爆風を使って、油井で発生した火災(反政府テロの犯…

スコリモフスキの青春残酷物語!

イェジー・スコリモフスキ『早春』 流浪の監督、スコリモフスキの過去の作品はまだ日本では見ることができないものが多いですが、1970年公開の本作もようやくDVD化しました。 主人公の男の子は、『ルートウィヒ』の、普墺戦争に参戦した事が原因で精神疾患に…

フランスの脱獄モノ、犯罪モノには傑作多し!

フランクリン・J・シャフナー『パピヨン』 かつて仏領ギネアは、フランス本国には囚人を送り込む、事実上の流刑地でした。 金庫破りと殺人(殺人は冤罪です)で終身刑となったパピヨン(スティーヴ・マクイーン)と贋国債作りで逮捕されたルイ・ドガ(ダステ…

当時は全くウケませんでした!

チャールズ・ロートン『狩人の夜』 チャールズ・ロートン。と聞いてピンと来る方は相当に映画がお好きな方ですよね。 イギリスの名優で、晩年にスタンリー・キューブリック『スパルタカス』で、煮ても焼いても食えない元老院議員を演じていた、あの太々しい…

今見るとますますコワイ!!

マイケル・ウィナー『Death Wish』 良くも悪くもチャールズ・ブロンソンを「午後ロー役者」にしてしまった怪作。 とはいえ、後年の、なんの躊躇なく拳銃をぶっ放して殺しまくる作品とは一味違う、かなり狂気じみた作品となっています。 本作は、サム・ペキン…

300回目は、戦争の狂気と祝祭を描く痛快作です!

フィリップ・ド・ブロカ『まぼろしの市街戦』 1966年に発表された、フランス映画史に残る怪作/快作。 なんという美しいくカラー撮影、美術! そして、ラストシーンのとてつもないアイロニーと反骨精神。 お話しは、第一次世界大戦中末期の西部戦線。 イギリ…

ワシントン・ポストvsニクソン大統領!

スティーヴン・スピルバーグ『The Post』 邦題『ペンタゴン・ペーパーズ』はちょっとミスリーディングでして、原題『The Post』、すなわち、ワシントン・ポスト紙の奮戦記とした方が、話としてはシックリ来ます。 内容の中心に、国防総省の、仏領インドシナ…

シリアスなテーマを「6歳の子供」にもわかる観点で描く痛快作

ジョナサン・デミ『フィラデルフィア』 1993年公開なんですね。もう結構昔の映画になっていますねえ。 もう古典的名作と言ってよいと思いますので、ネタバレ全開で進めていきます。 人々の偏見と戦う。というのは、アメリカ映画の一つの普遍的なテーマだと思…

映画館で見なくてはワカリマセン!

スタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』 リヒャルト・シュトラウス『ツァラトゥストラはこう言った』の冒頭で始まる、衝撃のオープニング! 断言しますが、この映画をDVDなどで見てもそのその感銘の1/10も伝わりません。 100インチでもまだ足りません…

アメリカの格差社会をマジックリアリズムで描いた傑作!

ショーン・ベイカー『フロリダ・プロジェクト』 とにかくうまい。驚くほどうまいですね、この映画は。 子供たちのホントにいい絵が撮れているんですね。 ドラ猫ギャング団 ショーン・ベイカーという監督の作品はコレ以外に見たことないんですけども、相当な…

ヴィスコンティにもフェリーニにも見える、イタリアの隠れた傑作!

ヴァレリオ・ズルリーニ『激しい季節』 戦争とは無関係に生きる人々。ちょっと『ベニスに死す』っぽくもあります。 コレもなかなか見る事が困難だった作品で、幻の作品になってました。 ようやくDVD化して容易に見ることができるようになりました。 ムッソリ…

カンヌ→カン(笑)

ホン・サンス『それから』 またしても不倫モノなのですが、1日の出来事で主人公のキム・ミニの立場が二転三転するという、ホン・サンス作品の中でも、なかなか劇的な作品。 夫の浮気を見抜く奥さん。 珍しく、かなりヨリの絵が出てくるのも驚きました。 こ…

カンヌン→カンヌ(笑)

ホン・サンス『クレアのカメラ』 ヤラレタ(笑)! もう、すごいですわ。 上映時間たったの70分。撮影も実際にカンヌ映画祭にキム・ミニとイザベル・ユペールが、それぞれの主演作(『お嬢さん』と『ELLE』というどっちも相当エグい作品ですが・笑)でカンヌ…

ハンブルグ→カンヌン

ホン・サンス『夜の浜辺でひとり』 2017年にホン・サンスはキム・ミニ主演で3本も映画をとりましたが、本作はその1つです。 映画は「1」「2」にハッキリとわかれてまして、ハンブルク編とカンヌン(江陵)編になってます。 近年のホン・サンス作品のよう…

ホン・サンスにとっての原節子か?

ホン・サンス『正しい日 間違えた日』 ホン・サンスの2015年の作品が2018年にようやく一般公開されました。 と、思ったら、新作までまとめて4作が一挙に公開という(笑)。 主演のキム・ミニを気に入ったホン・サンスが、立て続けに4本も映画を撮ってしまい…