アリーサの光と影を描いた秀作!

リースル・トミー『リスペクト』 アリーサ・フランクリンは、ソウル史上最高の女性ヴォーカリストです。 まず、この点を押さえておきたいのです。 飛行機恐怖症であった事もあり、アリーサは2018年8月16日に亡くなるまで(なんと、エルヴィス・プレスリーと…

スパッと90分で終わる、川島雄三の遺作!快哉!

川島雄三『イチかバチか』 本作の公開前に亡くなった川島雄三。享年45歳。 川島雄三の遺作にして、なんと社会派。 本作の公開の直前に自宅で急死してしまいました。 もともと、難病のALSを抱えながら映画監督をしていたんですよね。 しかし、そういうものを…

水俣病は実は何も解決していないのです!

原一男『水俣曼荼羅』 強烈な映画を撮り続ける原一男監督は拍子中するほど穏やかでユーモラスな方です。 制作年数なんと20年!(編集だけで5年かかったそうです)、上映時間6時間を超える超大作ドキュメンタリー。 2021年に、フレデリック・ワイズマン『ボス…

アメリカの伝説的人物のエピソード1をアニメ化!

レミ・シャイエ『カラミテイ』 コレは驚きました! とにかく、何の予備知識もなしに映画館に行くことをオススメしたい。 なので、見たい人はコレは見てから読んでくださいね。 いいですかな? では、続けます。 フランスとデンマークの合作映画の西部劇しか…

前作と合わせて一作の頓知バイオレンスホラー!

ロド・サヤゲス『Don’t Breathe 2』 高畑勲の伝説的名作、『アルプスの少女ハイジ』(以下、『ハイジ』)のとりわけ第一部とも言える「アルムおんじ編」は、メインキャラクターが、主人公のハイジ、そして祖父のアルムおんじ、羊飼いのペーターしかいない、…

2021年のベスト3に確実に入る痛快作!

ジェームズ・ガン『The Suicide Squad』 前回のは無かったことにしてね!という痛快作! 最高でした! 100億円かけたトロマ映画ですね(笑)。 舌禍事件でディズニーをクビになってしまったジェームズ・ガンを救ったのは、なんと、DCコミックを映画化してい…

川島雄三の大傑作!必見です!!

川島雄三『喜劇とんかつ一代』 タイトルの豚のドアップからしてもう面白いです! いやー、コレはもう最高でした! 平凡なタイトルからは想像もつかないような大傑作です。 登場人物の人間関係がやたらと複雑ですが、見ていてそれで訳がわからなくなってはき…

川島雄三の余りにも早すぎた怪作!必見!

川島雄三『グラマ島の誘惑』 噂にはすごいと聞いてましたが、ここまですごい作品だったとは。というのが、見終わった後の率直な感想です。 1959年にこんなものすごい映画を撮っていた、川島雄三には、改めて畏敬の念を持ちましたね。 皇族の将校か乗っている…

本年のベストと言える傑作!なのだがががが!

スパイク・リー『デイヴィッド・バーンのアメリカン・ユートピア』 本作は2018年に発表された、デイヴィッド・バーンのアルバム、『American Utopia』のいくつかのライブの様子を撮影した作品です。 ただし、ライブの模様を撮りました。的なラフなものでは決…

無節操なまでに題材を次から次へと変えて撮っていくのが中平康の魅力です!

中平康『紅の翼』『あいつと私』『牛乳屋フランキー』 黒澤明にとっての三船敏郎、増村保造にとっての若尾文子がそうであったように、中平康と最高に相性の良かった俳優は我らが石原裕次郎である事はこの2作を見れば明らかです。 『紅の翼』は1958年、『あ…

なぜ2倍になってしまったのか?を考えてみました。

マイケル・マン『ヒート』 アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロのダブル主演で、ヴァル・キルマーやジョン・ヴォイドという豪華なキャスティングで各シーンも大変にみなぎる映像ですし、主演二人の余裕綽々の見事な演技も見られるにも関わらず、総体として…

皮肉の効いたラストがヒステリックになっていた米国人を怒らせるキッカケとなったのは、今もって残念。

チャールズ・チャップリン『殺人狂時代』 製作、監督、脚本、主演、音楽をこなす、チャップリンの戦後初の映画にして、赤狩りの直接のきっかけともなってしまった作品(ちなみにチャップリンは1930年代からFBIに危険人物として、すでにマークされています)…

意味とかリアルを失っても残存する気分こそが映画なのではないのか?

中平康『月曜日のユカ』 このタイトルのカッコよさ! 中平康の生前の評価は芳しいものではなかったようです。 中平康。果たして、満足できた映画をどれだけ作れたのでしょうか。。 たしかに、同世代といってもよい、市川崑、増村保造、岡本喜八という監督と…

何という濃密な4時間!!

胡波『象は静かに座っている』 アジアの映画で4時間の長編。というと、映画好きな方ならば、エドワード・ヤン『クーリンチェ少年殺人事件』を思い起こすのではないでしょうか。 実は本作もある過失事故死がお話しの中心となっているんですね。 しかも、それ…

非常に正攻法の男の子必見のドラマです!

ジェイムズ・マンゴールド『フォードvsフェラーリ』 1966年のル・マン24時間耐久レースをめぐる、まさに男のドラマです。 史実があまりにも劇的であり、カーレース史に残る出来事なので、ある意味、盛大なるネタバレ案件です。 坂本龍馬が明治直前に暗殺され…

そっちから見せるの?なるほどね!という傑作ネオ透明人間

リー・ワネル『透明人間』 一体何回目のリメイクなのかわかりませんが、「なぜ今更?」としか思えなかったのですが、いやいやどうして、コレはめちゃくちゃ面白かったですよ! 『ドント・ブリーズ』以来の傑作ホラーサスペンスです! 「透明人間」って映画的…

まさかの完結編が(笑)!キアヌ、ありがとう!

ディーン・パリソット『ビルとテッドの時空旅行』 驚きました。 前作『ビルとテッドの地獄旅行』が1991年です。 29年ぶりの続編ですよ(笑)! しかも、主演のキアヌは今や大スターであり、もはやアホアホ映画に出るような人ではありません。 にも関わらず、…

「ジャスティス」のカケラもない、テンポと間合いで見せるバイオレンス痛快作!

S・クレイグ・ザラー『Drugged Across Concrete』 いやー、面白かった! ストーリーのメインは身もふたもない、金塊の取り合いです。 しかも、人気など全くない場所で、停職中の刑事2人とその金塊を銀行から強奪したグループとです。 ここに至るまでをなん…

2020年はこんな映画を見ました!

2020年映画ベスト10(同不順) 今年はあんまり映画館で新作見れませんでしたので、10本あげられません(訂正。新年にDVDで見て随時補足する事にしました・笑)。 旧作は勝新、ボン・ジュノ、レオーネの年でしたね。中韓の作品のクオリティはもう世界水準であ…

座頭市シリーズ史上、最も凄惨な傑作!

勝新太郎『新座頭市物語 折れた杖』 『顔役』に続き、勝新太郎が監督、主演した、おなじみ座頭市。 『顔役』のあまりの凝りっぷり、ナチュラルな壊れっぷり(故に愛さざるを得ないのですが)への酷評に反省したのか(?)、勝新太郎最大の当たり役である座頭…

香港というアジアの楽園を撮った快作!

陳果(フルーツ・チャン)『香港製造Made in Hong Kong』 1997年に香港が中国に返還される年に公開された、いわゆる「返還三部作」の第1作目。 香港映画の魅力は、やはりというか、あの香港というカオス的な空気感が画面の中に見事に捕らえられている事であ…

アホっぽいタイトルに油断することなかれ!

スティーヴン・ヘレク『ビルとテッドの大冒険』 2020年にまさかの続編が公開される、まだ無名時代のキアヌ・リーヴス主演の作品。 ロックスターになりたいのにギターがロクに弾けないビルとテッド(笑)。 タイムトラベルものなのですが、『バック・トゥ・ザ…

勝新太郎度120%の振り切れた怪作!

す勝新太郎『顔役』 1971年に公開された、製作、監督、主演、脚本がすべて勝新太郎という、大阪ヤクザの抗争に介入していく型破りな刑事を描いた映画。というと、おお、なかなか面白そうじゃないですか。と思いますよね、普通。 しかしですね、この映画はそ…

タランティーノが多大な影響を受けた大傑作!

セルジオ・レオーネ『Once upon A Time in The West』 そんな映画あったっけ?in Americaの間違いでは?といわれそうですが、たしかにこの映画は存在しており、in The Westなんです。 タイトル通りの西部劇なのですが、マカロニ・ウェスタンの監督が、このジ…

本作をもって巨匠と呼ぶにふさわしい監督になったのではないか。

奉俊昊(ボン・ジュノ)『パラサイト』 アカデミー賞受賞式のボン監督。 カンヌでパルムドール、アカデミーで作品賞を取ってしまった作品。 しかも、アジアでの作品でアカデミーで作品賞を取ったのは史上初。 アカデミー賞というのはグラミー賞と同じで、ア…

永遠の映画少年の遺作にしてまたしても問題作!

大林宣彦『海辺の映画館キネマの宝箱』 いやもう、圧倒されました。 大林宣彦は長編デビュー作『HOUSE』から常に問題作を作り続けていたんですけども、遺作までもが問題作とは! およそ、その穏やかなタイトルからは微塵も読み取れないような、躁病的な実験…

ボン・ジュノは最初からボン・ジュノだった!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『ほえる犬は噛まない』 『グエムル』でも活躍するぺ・ドゥナ。 奉監督の長編デビュー作であり、彼の作品は見たものはすべて好きなのですが、私はコレが一番愉快で好きですね(笑)。 韓国のとある団地で起こる珍事件を描いた、一体ど…

猟奇的な事件をある種のユーモアを交えて描く傑作!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『殺人の追憶』 1980年代から90年代にかけて、実際に起こった連続殺人を元に作られた衝撃作。 シリアルキラーものそれ自体は、アメリカなどで既に多く作られてきたので、それ自体は目新しさはないのですが、その描き方がとても新鮮で…

変化とは単線的には起こらない。

ジャ・ジャンクー(賈樟柯)『長江哀歌』 自らの故郷である、山西省(黄河中流域)を描くことの多い賈監督が、タイトル通りに長江の、しかも、なかなか中国では取り上げにくい題材と思われる、三峡ダムの建設によって水没していく事運命の町を舞台とした傑作…

3つの世代を通じて描かれる、韓国現代史!

キム・ボラ『はちどり』 長編第1作との事ですが、普通、処女作というのは、やったるぞ感となんでも盛り込みすぎ気味をどんな監督でもやってしまうものですが、この風格と余裕と完成度には相当度肝を抜かれましたね。 キム・ボラ監督。 1994年の夏から秋にか…