本年最大のナーメテーターでした!

ジョナサン・デイトンヴァレリー・ファレス『Battle of Sexes』

 

f:id:mclean_chance:20180829125212j:imageWTAという女子テニスの協会を使ったことが、テニス協会を刺激しました。


バトル・オブ・セクシーズ。という邦題は昨年公開された『ドリーム』と同じくらいひどい!

 

「セクシーズ」て(笑)。午後ローじゃないんだから。


はい。


本作は、1973年に行われた、男女によるテニスの試合、Battle of Sexesに基づいた映画です。

 

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セクシー金髪水着美女軍団は出てきません(笑)。


史実ですから、当時、現役女子プロテニス・プレイヤーのトップ選手である、ビリー・ジーン・キングが、往年の名選手である、ボビー・リッグスに勝利して、当時としては破格の賞金10万ドルを獲得した事は、ウィキペディアにすら書いてあります。


当然、この手の作品は、役者の力量、監督の演出力の確かさ、美術や撮影のこだわりが問われるわけですが、結論からいうと、これらすべてがおしなべて高水準!


本年公開した新作の中でもベスト3は確実なのではないでしょうか。

 

主演の2人、エマ・ストーンスティーヴ・カレルは共にキャリアハイを叩き出しております。

 

エマ・ストーンの演じる、ビリー・ジーンを見ていると、ジョディ・フォスターが思い出されますね。

 

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だんだんジョディー・フォスターに似てくるんですよ。


恐らくですが、レズビアンでもある彼女は、この役やりたかったでしょうね。


しかし、ジョディはかなり小柄な人なので、どうしてもテニスプレイヤーを演じるには難しかったでしょうし、まだ時代的にこの企画は難しかったのでしょう。


この手の話しは何と言ってもヒールが立ってないと面白くないですが、ボビー・リッグスを演じるスティーヴ・カレルの、「おもしろ憎たらしいオヤジ」ブリがまあ見事でした。

 

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ヒールがギャンブル依存症のおもしろおじさんという設定がよかったですね。

 

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お祭り生活に愛想をつかされてしまう、リッグス。


彼のコミカルさが、とかく、真面目すぎるフェミニズム映画になりかねない作品を、そうではない方向に持って行くことに成功してますよね。


型通りのマッチョな白人オヤジvsフェミニズムの闘士。など、誰も見たいとは思わないです。

 

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マーガレット・コートがリッグスに滅多打ちにされる試合を見て、覚悟を決めるビリー・ジーン。


キングの恋人として出てくるアンドレア・ライズボローさんがものすごくよかったですね。

 

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実は、南アの元テニス選手でした。


映画では美容師としてのみ出てきて省略されてますけど、彼女もテニス選手でした。


あと、本作で特筆すべきは、1970年代の風俗を見事に再現しているのと、1970年代のアメリカ映画のザラついた質感の映像を、デジタル技術で再現していることですね。

 

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WTAのスタッフには、ゲイの方もいたんですね。


そして、更にすごいのは、その凄さがこれ見よがしなところが全然なくて、ものすごく自然なのが驚きました。


自然に見えることにデジタル技術を駆使する。という方向が実に面白かったですね。

 


ウィキペディアを見ているだけでこの2人人生は相当に面白いのですが、そういう部分はほとんどカットして、どこまでも、この世紀の一戦がもつ歴史的な意味(それはラストシーンで、ゲイのスタッフがビリー・ジーンに語りかけるセリフに凝縮されています)に焦点を当てつつ、それをロバート・オルドリッチロンゲスト・ヤード』のように清々しく見せたところがよかったですね。


日本ではタイトルのせいもあってか、今ひとつ注目されていない映画ですが、こんなに清々しいアメリカ映画見たのは久しぶりです。

 

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この試合がなかったら、女子テニスの賞金は相当低いままだったでしょう。

 

 

ゾンビ映画はアイディアの源泉だなあ。と改めて痛感させられた傑作!

上田慎一郎カメラを止めるな!

 

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東京都心部は連日こんな感じらしいです


当初はたったの2館しか上映していなかったのですが、連日満席となり、とうとう、現在は全国100館を超える上映となってしまった作品。


本作は、実際見ることによってビックリドッキリという、言ってしまうと、ヒッチコック『サイコ』のようなところがあるので、あまり内容に立ち入ることは極力控えようと思います。

 

といいますが、本作は何の予備知識も持たずに見るのが一番良いと思いますので、明日にでも映画館に観にいく方は、この文章は見終わってから読んでください(笑)。


「うわ、今までのは映画だったんだ」という冒頭を映画史的に最初期に成功させたのは、恐らくは、オーソン・ウェルズ市民ケーン』だと思いますが、本作もゾンビ映画という形で、それを成し遂げます。


しかも、手持ちキャメラ1つで延々と30分です(ココをバラしても、驚きが減衰する事はない事を保証します)。

 

かつて、相米慎二という、撮影現場が地獄のような映画監督がいましたが、その彼でもやならかった30分ワンショットというのは、映画史上でもこれに匹敵するものはないでしょうね。

 

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主人公の監督が作品内のドラマで怪演。なぜ思い切りキャメラ目線なのかは見てのお楽しみ。


本作はかなりの低予算映画ですが、それすらもを逆手にとって展開していく後半が(低予算でアクシデントだらけである事が生きてくるんですね)、なぜ、こんな激越な手法を使ってのゾンビ映画になっているのかを明るみにしていくここからは、ホントに笑えますし、ラストシーンは、なんと、感動すら湧き上がってきます。驚くべきことに。

 

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一切説明なし!


まさかのスポ根とゾンビ映画の融合。という、それぞれに鉄壁の安定感のあるフォーマットを組み合わせるという意外性が、こんな形で転がっていくのか。という事の快感が見事としか言いようがありませんね。


ジョージ・A・ロメロに生前是非とも見てもらいたかった近年稀に見る痛快作。

 

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前半と後半でガラッと同じシーンの意味が変わります。

 

 

 

神話と真実

パブロ・ラライン『ジャッキー』

 

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実際のジャクリーン・ケネディナタリー・ポートマン演じるジャクリーン。


ケネディ大統領の夫人であり、のちにギリシャの海運王アリストテレスソクラテス・オナシスと再婚したジャクリーン・ケネディから、大統領暗殺事件の顛末を描くという、ちょっとした異色作。


監督はなんとチリ人のパブロ・ララインです。


ジャッキーを演じたナタリー・ポートマンは、アカデミー主演女優賞を受ましたが、恐らく彼女のキャリアハイと言ってよい、見事な演技ぶりです。


伝記映画、とりわけ、超がつく有名人のそれはもうストーリーは丸見えですから、やはり、見せ方、そして、役者たちの存在感、演技の素晴らしさで見せるしかないのですが、本作は、何よりも、ナタリー・ポートマンでひたすら見せていくというのが特徴というか、ほとんど画面の中心に出ずっぱりで、ケネディ大統領と一緒にいる場面であっても、キャメラはジャッキーを中心に写していて、JFKは見切れてます。

 

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この徹底した撮り方は、ホントにユニークですね。

 

全然違うタイプの伝記映画、ルキノ・ヴィスコンティ『ルートウィヒ』も四時間にわたってほとんど ヘルムート・バーガーが出ずっぱりでそれ以外をほとんど背景にしていますけども、本作の撮り方も、徹底してジャッキーの心の動きを追っていくという大胆な演出です。

 

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暗殺直後のジャッキー。


ジョンソン大統領やロバート・ケネデ司法長官も画面上には映ってますが、特に重要な役割は果たしてません。

 

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エアフォース・ワンで急遽大統領に就任する、リンドン・ジョンソン


ストーリーはおおよそは時間軸に沿って進むのですが、時々時間が前後します。

 


それは、本作がジャッキーの自宅を訪問したインタビューとして進んでいくからです。

 

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インタビューは、あくまでも「ケネディ家の神話」に沿ったものを要求するジャッキー。


こういう描き方ですので、ある程度ケネディ大統領やジャッキーの事を知っていないと、ちょっとわかりにくい作品に見えるかもしれませんが、目の前で最高権者の夫が狙撃されて即死するのを見た。という極端な経験が、一体どういう事をもたらすのか?という点に絞って見て入れば、史実はそれほど知らなくても大丈夫な気はします。


本作は時間軸としては、大統領が暗殺され、その葬儀が行われるまで(ホントはもう一つあるのですが)が描かれます。

 

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キャロラインとジュニアを連れての葬儀。


先程、本作は、ジャーナリストのインタビューに沿って進む。と書きましたが、実は、本作はもう一つの対話が進んでいきます。


それは、ジョン・ハート演じる神父との対話です。

 

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ジャッキーは、ジャーナリストに対しては、「偉大なるケネディ家における悲劇とその妻の物語」を語りながら(要するに、徹底した検閲を行なっているのです)、神父には、心の奥底に眠る真実を告白しているのですね。


アメリカの偉大なる「王家の物語」と「ある女性の神父への告白」という二つの軸を使って、それが恰も、ジャッキー・ケネディのオモテとウラのような関係でえがかれているんですね。


こういう物語ですので、ケネディ暗殺云々についての掘り下げが見たい方は、そちらをご覧ください。


内容はとてもよいのですが、どうも日本では過小評価されている気がします。

 

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ある男の1週間を綴った、詩のような作品。

ジム・ジャームッシュ『パタソン』

 

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ニュージャーズィー州パタソン市に住んでいる、パタソン氏の1週間を描いた作品。


立川市に住んでる、立川さんみたいな感じでしょうね。


パタソンを演じているのが、アダム・「ドライヴァー」というのも、ギャグなのでしょう。


ジャームシュは、若い頃からミニマルな作風の人ですけども、本作はとりわけミニマルな作品です。


月曜日から日曜日までの一日一日を担当淡々と描いているんですが、朝のバスの出発前に詩を書き、そこにインド系の同僚のドニーが挨拶に来る、仕事中の乗客の会話、奥さんのローラとの会話、犬のマーヴィンとの散歩、その途中でバーへの寄り道といったシーンが繰り返し出て来ます。

 

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仕事の直前まで詩を書いている。


あと、なぜか、双子に出会います。

 

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しかし、それは全く同じではなくて、微妙に違っているんです。


大きな事件は何一つ起こらず、泣いたり叫んだりするシーンは全くありません。

 

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よく見ると、カイロ・レン。


7話のオムニバスを見ているようにも思えますが(ジャームッシュはオムニバス形式の作品が結構多いですよね)、時間経過は直線的でパタソンとその妻、愛犬、バーの店長ドクと店の常連は固定されています。

 

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少々トんだ感覚の奥さん、ローラ。

 

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ジャームッシュは犬派?


そういう意味では、コーヒーとタバコが出てくるオムニバス形式の『コーヒー&シガレット』よりも更にミニマルな作品ですね。

 

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こういう横並びの男女のショットが多いです。


お話として盛り上がってくるのは、金曜日からなのですが、そこは見てのお楽しみに。


会話の独特の間合いと場面のつなぎ方だけで2時間近い映画を成立させてしまう(しかも、ちゃんと観客を惹きつけるのです)という、余裕綽々たる、巨匠のお仕事ぶりなのでした。

 

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同時期に、イギー・ポップのドキュメンタリーを作って公開しているのも、とてもお茶目だと思います。

 


この辺からジャームッシュの世界に入って、80年代の作品を見てみるのもいいかもしれません。

 

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『ミストリー・トレイン』以来の出演となる、永瀬正敏が出てきます。

 

モデルとなる主人公は映画公開後に射殺されます!

深作欣二『北陸代理戦争』

 

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深作欣二実録やくざ映画の最終作。


いきなり組長の西村晃が生き埋め!

 

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のちに水戸黄門をやる事になるとは(笑)


競艇の経営の権利を若頭の松方弘樹に強奪されてしまいました(笑)。

 

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福井のやくざはかなり凄絶です!

 

そこに、大阪のやくざの武闘派である金井組が着々と進出しているんですね。


その組長が千葉真一でして(笑)、もう、笑ってしまうほどテカテカ、ギラギラです。

 

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テカテカすぎて笑ってしまいます(笑)。


要するに、西村晃の組内の内部抗争に、大阪のやくざが干渉してきているという構図です。


更にややこしい事に、松方弘樹の方にも大阪のやくざの組が協力すると言い始めています。

 

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大阪のやくざの協力を拒む松方弘樹


つまり、組の抗争はそのまま大阪の組間の抗争でもあるという、なんとも冷戦下のアジア、アフリカの内戦そのまんまなのですが、日本最大の暴力団である山口組は、そのようにして、全国にわたる巨大な組織を作る事に成功しました(その山口組が現在2つに分裂してしまいました)。

 

西村晃の若頭、ハナ肇が、これまでの実録モノの中ではちょっと異色の独特のトボけた味わいがあって、いいんですよ。

 

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ハナ肇西村晃の後を継ぐ事に。

 

というか、北陸という土地柄なのか、これまでの実録モノとはどこか違う粘っこい味わいが全体的にあります。


冬の抗争なので、福井の雪の多さも、かなり絵が変わりますよね。


松方は組長側のだまし討ちを受けて重症となり、死を偽装して、輪島に潜伏してケガの回復を待ってますが、そこからは見てのお楽しみという事で。

 

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バイオレンスシーンがかなりエゲツないです。


仁義なき戦い』シリーズとは一味違う、独特の暗さがある逸品。


主人公の松方弘樹は相方の伊吹吾郎とともにひたすら撹乱者として機能します。


敵味方が平然と何度もコロコロと変わっていくのも(実際のやくざはそういうものなのでしょう)、本作の見どころでしょう。


ちなみに、これは当時の北陸で起こっていた抗争をモデルにしていたそうで、本作公開後に松方弘樹のモデルとなったやくざは射殺されています。。


菅原文太が出演していないなどの致命的な問題もあり、実録やくざ映画の中でも、飛び切り興行成績が悪かったのだそうです。


こんな凄絶な作品なのに、90分で終わるのもすごいです。

 

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見直しました。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『メッセジ』

 

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シャレにならないほど巨大な物体が世界各地に出現。


見ていると、初めは『アレッ、これはタルコフスキーの『サクリファイス』と『惑星ソラリス』のパクリなのかな?と思わせるところが多々ありました。

 

あと、明らかに『2001年宇宙の旅』のパクリみたいなショットがチラッと出てきます。


恐らく、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、相当にアンドレイ・タルコフスキーが好きなのでしょう。


自作の『ブレードランナー2049』でも、明らかに『サクリファイス』を思わせるシーンが冒頭に出てきます。


ある時、巨大な12の物体が地球上に現れ、大混乱になります。

 

アメリカのモンタナ州にも、それは出現しました。


言語学者のルイーズ・バンクスの元に、陸軍が現れます。

 

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地球外生物の言語の解析を依頼される、言語学者のルイーズ。


「この言語を分析してほしい」

 

なんと、あの巨大な物体には、地球外生命体がいるようで、コンタクトを取ってきているようなのです。


その地球外生命体は、7本の脚があり、「セプタポッド」と便宜上呼ぶ事にしました。

 

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ガラス越しに二体のセプタポッド(アボットコステロと呼んでます)と接触します。


ルイーズの根気強い接触によって、彼らの言語は、発話と文字は結びつかない事がわかり、表意文字である文字を使ってのコミュニケーションが可能である事がわかってきました。

 

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なんと、これがセプタポッドたちの文字なのです。


ルイーズたちの研究者スタッフは、「あなた達は何の目的で来たのですか?」という質問が出来るようにするために、セプスポッドの言語のボキャブラリーを蓄えていきました。


しかし、ココで大問題が起きます。


このセプタポッドと接触しているのは、アメリカだけではなく、ロシアや中国、日本などの国もそれぞれに接触していたんですね。


そこで、「武器」という言葉が出てきたことで中国の人民解放軍がセプタポッドに恐れを感じ、とうとう宣戦布告を宣言し、これにロシアとスーダンが同調し、各国も情報交換を一切やめてしまいます。


この接触から対立までを、ヴィルヌーヴはゆっくりじっくりと描いていくんですね。


こういう静かでゆっくりとしたら語り口が実にうまいですね。


ブレードランナー2049』は大変残念な作品でしたが、本作は大変素晴らしいと思います。

 

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セプタポッドの手(?)は、結構コワイです(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テーマは「父と子」!

ライアン・クーグラーブラックパンサー

 

※公開してそれほど経ってませんので、写真は少なめです!

 

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ワカンダの最新テクノロジーを駆使したスーツは、アイアンマン以上の性能を持つ。

 


すでに「アベンジャーズ」などの作品で登場していた、ブラックパンサーが満を持して公開。

 

監督は、なんと、『クリード』の監督です。


『ロッキー』のスピンオフ作品という、正直かなりイカモノ臭ふんぷんたるイメージを覆す、見事な傑作を撮り上げた気鋭のアフリカ系の映画監督が起用されたと聞いて、見ないわけにはいかないではないですか。


ブラックパンサーは、マーベルコミックのヒーローの中でも異色の存在で、アフリカの王国、ワカンダの王様です。


アベンジャーズでもチラッとワカンダ王国は出てきますが、謎の鉱石ヴィヴラニウムが採掘される、ほとんど鎖国状態の国です。

 

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各部族の首長のデザインも秀逸です!


外見上は、アフリカ内陸に存在する、貧しい小国なのですが、実際は、桁外れの科学技術をもった国家でして(笑)、ブラックパンサーのスーツも、そのテクノロジーを駆使してできています。

 

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桁外れな未来都市を形成するワカンダ王国!

 

『シビル・ウォー』を見るとわかるように、国王ティチャカがウィーンの国連の会議で演説中にテロリストに暗殺されてしまい、王子のティチャラが急遽、国王にならなくてはならなくなりました。


お話は、その『シビル・ウォー』の直後から始まります。


本作のテーマは「父と子」です。


ヴィブラニウムをめぐるすったもんだも面白いわけですけども、本作のメインは、やはり、ティチャラが真にワカンダの王の継承者なのか?という事が問われ る事です。


本作の冒頭は、なぜか1992年のオークランドから始まり、先代のティチャカがブラックパンサーの頃を描いています。


それが意味するところがしばらくわからないまま、お話が進むのですが、ヴィブラニウムを追う中で現れるアフリカ系アメリカ人の存在が浮かび上がった時に突如、その意味がわかってきます。


ここからお話は、「王位継承」にうつっていくんですが、ここからが本作の見せ場になっていくといえましょう。


この、「父と子」の問題をここから実に、丁寧に描いていく手腕には心底驚きました。


ライアン・クーグラーはマーヴェル映画という、巨大なプロジェクトに乗りながらも、実は、見事なまでに自分のテーマに引き込み、完全に自分の表現にまで高めている事に驚きました。


また、登場人物の多くがワカンダ王国という架空の王国の人々で、一応、英語で話すのですが、アフリカの英語圏の人々の訛りをかなり忠実に再現し、英語自体も文法がかなりピジン化しており、細部がキチンとしているのは、ホントに関心しました。

 

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主人公ティチャラの熱演が光ります。すちゃらか社長と並ぶマーヴェル映画最強キャラの誕生です。


さて。

 

ここまで書いてきて、一番引っかかるのが、本作のタイトルである、「ブラックパンサー」と、1960年代に実際に誕生した政治結社ブラックパンサー党の関係です。


クーグラー監督は否定しますが、ブラックパンサー党が誕生したのは、本作の冒頭シーンである、カリフォルニア州オークランドで誕生した事は偶然の一致とは思えません。ブラックパンサー党は、アフリカ系アメリカ人が銃で武装する事を主張していた事から、とても過激なイメージが強いのですが、彼から彼女らが一番力を入れていたのは、アフリカ系アメリカ人貧困層への支援でした。

 


コレはネタバレしても問題ないと思うので、してしまいますが、ティチャラは、これまでワカンダが頑なに守ってきた、他国への不干渉主義をとうとう破り、オークランドにワカンダ王国初の「国際支援センター」の支部を作ります。


明らかにブラックパンサー党を意識しているラストシーンだと思うのですが、あんまり指摘されてないようです。


また、王位継承をめぐる大河ドラマとして、『バーフバリ』二部作もありましたが、あちらのとにかく豪快で痛快な面白さとは一味違う奥行きが感じられます。


マーヴェル映画の中でも屈指の傑作であり、2018年公開映画では、間違いなくベスト5に入ると思います。

 

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