賈樟柯(ジャ・ジャンクー)『山河ノスタルジア』
いきなりダンス!
いきなりビックリです。
なんと今時スタンダードサイズで撮影してますよ。
1950年代の映画ではないですよ、コレ。
2010年代の中国です。
内戦から立ち直ったアフリカのとある国が乏しい機材でなんとか撮って、カンヌに出品したら、めちゃ評価された。ではなくて、GDP世界第2位の国の映画です。
しかも、冒頭にペットショップボーイズがかかっていいて、それに合わせて若人(こう言う表現がピッタリな、「昭和30年代の日本」を感じさせる人たちなんですね)が踊っている。
何事かと(笑)。
中国の町並みは、それこそ魯迅が小説に描いている頃からほとんど変わっているようには見えないんですが、日本製と思しきスクーターに乗っているので、ようやく、現代の中国(1999年の春節から始まります。なんでしょうね、この微妙な昔から始まるというのは)である事がわかります。
この風景が一貫して変わらないのだ!
春節の準備をするタオ。
汾陽。という場所のようです(後で調べましたら、山西省の都市ですね)。
ドイツ製の新車を買った事を自慢するとか、高度成長期の日本そのもので、微笑ましいです。
新車を無邪気に乗り回す。
この新車を買った、成金男のジンジェンは、恐らくは幼馴染なのでしょう、タオという女性の事が好きになります(私の通院している整骨院の女性にちょっと似ています)。
彼が所有する炭鉱で働く幼馴染のリャンズーもクビにしてしまいます。
ジャイアンなところが少しある、純情な青年ですね。
成金男のジンシェン。
そうかと思うと、すんごい爆音のテクノがかかったクラブで踊るシーンが出てきて、かなり仰天します。
道路もロクに舗装されてきない、いつも砂埃な待っているような街なのですよ。
このアンバランス感が強烈で、コレは現在の日本映画では表現できませんね。
役者さんたちの顔に刻まれている生活感(これはメイクでは出てこないと思います)とリアルが、日本人からは消え失せてますからね。
現在の日本人は、空虚でツルンとしています。
タオは結局、ちょっと千原兄弟ほせいじに似ているジンシェンと結婚してしまいます。
結婚式の招待状を渡すが。
で、リャンズーは街を出ていってしまいます。
それにしても、ワンショットが結構長いです。
アンゲロプロスや相米慎二のように引いたアングルでなくて、かなりよった距離で、キャメラも当然ながら人物の動きに合わせて微妙に動かしながら(手持ちで手ブレさせている。みたいなゴダールとは違いますね)、撮ってるのがとても印象的です。
で、それをスタンダードサイズであえてやっているので、画面が結構な密度と圧迫感が出てきますね。
で、なんと、ここまで約40分がプロローグでして、ようやくタイトルが出てきまして、画面がビスタサイズになるんですよ。
腰が抜けました(笑)!
原題は山河故人。で、故人というのは、中国語(というか、コッチがオリジナルで日本が勝手に改変して使っているのですが)で、友人の事です。
旧約聖書にある言葉です。
時代は一挙に2014年となります。
故郷を捨てたリャンズーはどうにか結婚して子供も生まれ、つつましい家庭を築いているようです。
やはり、炭鉱夫をしているようです。
しかし。。というところまでとしまして、後はDVDなどで続きを。
iPhoneなどが出てくるので、まるでSF映画見てるみたいに見えますけども、それだけ中国の変化はものすごいスピードなんですね。
すれ違う母と子。
それを微妙な過去から現在、そして、微妙に未来(なんと、2025年のオーストラリアです!しかも画面がシネスコサイズになるのです!!)という時間軸出て描かれているのが、ありそうでなかったのが、とても新鮮です。
ちょっと後半がアタマで作っている感がありますが、ノスタルジー。というよりも、iPhoneやiPadと魯迅が同居しているのが、現在の中国である(それは「格差社会」などという、単純なものではない)。という事がよくわかる作品です。
ペットショップ・ボーイズが重要です。