全国のお父さんを100%号泣させたであろう、大傑作!

原恵一クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』

 

f:id:mclean_chance:20170326113318j:image

いきなり、太陽の塔

 

 

オープニング曲のトースティングがなかなか素晴らしいんですけども、コレもまた天才原恵一の名を世に知らしめた名作です!

 

f:id:mclean_chance:20170326113445j:image

春日部にこんなトンデモな施設ができてます(笑)。

 

 

冒頭で怪獣が大阪万博ソ連館を破壊するシーンが素晴らしい(笑)!!

 

「20世紀博」なるイベントが春日部市で行われ、野原一家だけでなく、町中の大人がこのイベントの虜になっていきます。

 

しかし、しんちゃんたち子供には、昭和へのノスタルジーなどある筈がなく、なんだかおかしいなあ。と思っているんですね。

 

そうこうしていると、アナログ盤が流行りだしたり(コレは現在、実際に起こってある現象ですが・笑)、街に旧車が走っていたりと、モーレツな昭和ノスタルジーに街全体が支配されていくんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170326113544j:image

 

 

しかし、コレは、秘密結社「Yesterday Once More」(カーペンターズの名曲というのがいいですね)が用意周到に行なっている陰謀だったのです。

 

この謎の組織のリーダーのケンの世界観はこうです。

 

f:id:mclean_chance:20170326113720j:image

コレがラスボスのケンとチャコ。なぜか安アパートに住んでます。

 

 

「高度経済成長期の日本はとても希望があって輝かしかった。21世紀という未来がとても素晴らしいものに感じられた。しかし、実際の21世紀はなんとつまらないものなのだろう。であるならば、そんなものは消し去って、もう一度高度経済成長の日本に戻してしまおう」

というものです。

 

なんだか、『エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウみたいな事言ってますけども、コレ、子供にはなんのこっちゃわからんでしょうね(笑)。

 

子供にとっては、あらゆるものがsomething newなのであって、ノスタルジなど感じる事などないわけですから。

 

しかし、オトナたちは、ほとんど脳みそレベルで乗っ取られてきているようで、しんちゃんは、この異常さにだんだんと気づいて来るんですね。

 

ミサエが家事を一切しなくなり、ヒロシが会社に行かなくなるんです。

 

なんと、ひまわりの面倒をしんちゃんが見るという、異常な事態です。

 

しかし、おかしいのは野原一家だけではなく、春日部市全体のオトナがおかしくなってしまっているのです!

 

しかも、春日部だけでなく、どうやら、全国規模でこういう現象が起きているらしい。

 

なんちゅうか、かなり本格的なディストピアSFをしてるわけなんです。

 

ちょっと唖然とします。。

 

f:id:mclean_chance:20170326113847j:image

しんちゃんたちのオトナごっこのシーン。『ダウンタウン物語』ですよね。

 

 

オトナのいなくなった春日部では、子供たちによって、アラン・パーカーダウンタウン物語』が展開するんですが、例の秘密結社は子供たちを「お父さん、お母さんに会えるよ」と言って、車で連れて行ってしまいます。

 

しかし、しんちゃんたちはコレを怪しんで、車(コレがオート三輪なのです)に乗りませんでした。

 

翌日、秘密結社は「子供狩り」を始めるのですが。というところまでにしておきましょうか。

 

この映画、前半はとにかくしんちゃんたちが『マッドマックス 怒りのデスロード』や『ブルースブラザーズ』並みの大活躍をするのですが、後半はヒロシのお話しになっていくんです。

 

が、コレが一切言えませんな(笑)。

 

f:id:mclean_chance:20170326113947j:image

『ブルースブラザーズ』顔負けのカーアクション。

 

f:id:mclean_chance:20170326114018j:image 

こんな風に運転してます(笑)。

 

 

ここからがこの映画の真骨頂というか、原恵一の世界ですね。

 

多分、子供映画だと思ってイヤイヤながらきてしまったお父さんたちは涙無くして見る事が出来ないでしょうね。

 

f:id:mclean_chance:20170326114111p:image

何のシーンかは言えませんが本編屈指の名作シーン! 

 

マルセル・プルーストが生涯をかけて書いた大作『忘れられた時を求めて』では、有名なマドレーヌを食べた時の味から、主人公の「私」が過去を思い出すのですが、この作品は「におい」です。

 

さあ、野原一家は、秘密結社の野望を打ち砕く事が出来るのでしょうか?

 

それは見てのお楽しみでございます!

 

子供にとっての「今」が果たして大切にされているだろうか?という監督のメッセージは、むしろ、現在切実な問題になっているような気がしてならない、大傑作。

 

f:id:mclean_chance:20170326114055j:image

 

 f:id:mclean_chance:20170326114129j:image

 

 

東映が日活アクションを撮った感じでしょうかね。

中島貞夫現代やくざ 血桜三兄弟

 

f:id:mclean_chance:20170325121212j:image

 

冒頭のレアグルーヴ感満点のサントラ(なんと山下毅雄のさっきです)から、やくざ映画と思えないノリです。

まだ、あの『仁義なき戦い』が作られる前のやくざ映画は、まだまだ過渡期というか手探り状態だったのだと思いますけども、コレもその中の一本と考えてよいでしょう。

渡瀬恒彦がエラく生き生きとしていて、ギラギラ感よりも、青春映画っぽいのが面白いですね。

戦後直後の混乱から高度経済成長期にかけてのヤクザ社会の形成を描く事が、いわゆる「実録もの」の定番の内容ですけども、これは完全にタイトル通りの現代、すなわち、1970年代のやくざを描いているんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170325121231j:image

大阪から岐阜へやってきた小池朝雄が地元のヤクザにイヤガラセを始める。

 

なので、ヤクザたちのギラギラとした異様な熱量は、本作にはあまり感じないんですね。

そのかわりに、生活感がものすごく伝わってきます。

 

f:id:mclean_chance:20170325121419j:image

一升瓶持って公園でクダを巻いているのが昭和です。

 

私の家の近くに住んでいる、若いおにいさんが実はヤクザの若いモンなんです。というくらいの感覚なんですね。

で、このリアリティは、渡瀬恒彦だからこそ出てくるんですね。

全体的に漂う、藤田敏八作品のようなアンニュイがなぜか東映の絵で展開するのか、とても不思議です。

菅原文太が大卒で伊吹吾郎の兄貴といのも、すごくおかしいです(実際の菅原文太早稲田大学卒業してるんですけど)。

 

f:id:mclean_chance:20170325121604j:image

設定にムリがあるこの兄弟。

 

最後の殴り込みは、ジョン・ウーを彷彿させるなかなか凄絶なもので、火炎瓶を使っているあたりが大卒を感じさせます(?)。

任侠路線がだんだんマンネリ化してきたため、現代のヤクザを描こうとして試行錯誤しているのがとてもよくわかる作品。

 

f:id:mclean_chance:20170325121656j:image

 

地獄の黙示録を超えました!

富田克也バンコクナイツ』

 

f:id:mclean_chance:20170320194952g:image

映画制作集団、空族(くぞく。と読みます)による3時間を超える大作。

Bangkok, Shit....!」

まさか冒頭が、『地獄の黙示録』のパロディから始まるとは(チョイチョイ、パロディが入ります。ワルキューレの騎行も流れますから・笑)。

 

f:id:mclean_chance:20170320195014j:image

タニヤ通りの娼婦の日常を淡々と描きながら、東南アジアの歴史を浮かびあがらせていく手腕には脱帽!

 

随分前の「ミツバチの叫びとささやき」で『地獄の黙示録』愛を書きましたが、本作は、その深さ、大きさにおいて、遥かに超えたと断言してよいです。

地獄の黙示録』は大好きですが、やっぱりアタマの中で考えている、アメリカ側の言い分でしかない事を思い知らされましたね。

とはいえ、サフィーン大好きキルゴアと狂人カーツは映画史上な残るキャラクターですけども(笑)。

基本は、バンコクに実在する、日本人ばかりが利用する歓楽街、タニヤ通りを舞台としますが、主人公である、インラック(お店のNo. 1)の故郷イサーン(字幕が秀逸ですな)、果ては、ラオスにまで撮影が及ぶという、今村昌平『神々の深き欲望』すら超える過酷な撮影がうかがえます。

 

f:id:mclean_chance:20170320195230j:image

2人の主人公、元自衛隊員でカンボジアPKOに参加した経験ある、オザワとお店のNo.1のインラック。

 

空族の前作『サウダーヂ』はほとんど山梨県から動かないわけですから、このスケール感がすでに日本離れしてしまっています。

バカなことばかりが考えている日本人男性。

それぞれに苦悩を抱えるタイの娼婦たち。

東南アジアの植民地の歴史。

とりわけ、インドシナ戦争ヴェトナム戦争がタイにすら繁栄と暗い影を落としているという現実。

文章にしてしまうと、エラく重苦しいテーマを重苦しく描くのではなく、どこかトホホで笑えてしまうタッチで描いているという凄さ。

 

f:id:mclean_chance:20170320195210j:image

よくわからんビジネスにオザワを巻き込もうとする日本人たち。

 

もう1人の主人公、オザワ(元自衛官)の彷徨う姿は、そのまんま『地獄の黙示録』のウィラードのようでもあり(オザワは、カーツ大佐の王国ではなくて、ラオスを経由して、ヴェトナムのディエンビエンフーまで、行き着くんです)、最後は『タクシードライバー』のトラヴィスすら感じさせます。

 

f:id:mclean_chance:20170320195434j:image

唐突に出てくるラッパー集団(笑)。 

 

全体としては、3時間もの時間をかけて何も起こってはいないし、何かが変わったわけでもないという(そういう予兆は感じるのですが、それは表立っては見えてこないんです)、そこもまたすごいところで、普通はオザワの自分探しの話し、インラックの家族の話し、キンジョウさんたちのおバカな日本人の話し、タニヤの売春婦の話し。と、焦点を絞り込んで語るはずだと思うのですが、本作はそれを敢えて全部放り込んで、グダグダにかき回して、あまりキレイに整理しないで私たちの前に見せてくるんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170320195546j:image

占い師のような人なのでしょうか、人生相談を受けるインラック。

 

そのことによって生み出される、異様なカオス感が見事で、時にグダグダすぎやしないか?とすら感じてしまうほどリアルですね。

そんなに簡単に現実が変わるわけないですから。

完全にフィクションのはずなのに、まるでドキュメンタリーでも見ているような生々しさすら感じてしまった大傑作。

ちなみに、空族作品は、一切DVDになりませんので、劇場で見るしかありません!ご注意を!!

 

 

國村隼、コワい!!!!

ナ・ホンジン『哭声』

 

f:id:mclean_chance:20170320193419j:image

 娘にカーセックスを見られてしまう、しがない田舎の警察官が主人公なのだ(笑)。

 

國村隼が褌一丁で森の中を走っている映画!

私が本作について知っていたのは、それだけです(笑)。

それにしても、見終わった後、全く言葉がないですね。

お話は、「コクソン」(谷城)という韓国のかなりの田舎町で起こる不可解な連続殺人事件から始まるのですが、これの操作に当たって地元の警察官である、ちょっと太っちょのさえない中年が主人公なのが驚きですよね。

 

f:id:mclean_chance:20170320193547j:image

とにかくすさまじい現場なのだ。

 

この事件はどれもこれも異様でして、被害者の殺害のされ方も尋常ではありません。

しかし、コレが、山に1人で住みついている、得体の知れない日本人(コレが國村隼です)が関係しているのでないのか?

 

f:id:mclean_chance:20170320193731j:image

登場人物としての名前すらない國村隼

得体の知れない日本人。という事以外は何もわからないという。。

 

という事になり始めてから、ダンダンストーリーがホントに怖くなってきます。

前半は、かなりコミカルで笑えるんですが、それが笑っていいのかどうなのかわからなくなってきて、それがやがて、全く笑えなくなってくるんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170320193857j:image

ついに、國村隼と対峙!

 

どのようにそうなっていくのかが面白いので、一切言えませんが、一体どうなるの、このお話し。というのが最後の最後までわかりません。

 

f:id:mclean_chance:20170320193958j:image

 娘のために懸命に戦うお父さん!

 

主演のお父さんが必死で家族を守るために、戦う姿は、ものすごい熱演ですが、それを超えるのが、娘さんですよね。

韓国の子役は、ここまですごいのか!と心底驚きました。

そして、ホントにコワい國村隼!!!

 

f:id:mclean_chance:20170320194056j:image

中盤の山場ですが、何のシーンかは言えません!

 

この映画、多分、世界の主要な映画祭の賞をかなりとりそうですが、國村隼とこの女の子は間違いなく受賞ものです。

 

f:id:mclean_chance:20170320194222j:image

この前半に出てくる女性が後に重要になってきます。

 

それにしても、脚本がべらぼうにすごです。

2時間半にも及ぶ大作を全く飽きさせずに見せてしまう力量は、並外れています。

 

f:id:mclean_chance:20170320194329j:image

 何のシーンなのかは言えません!

 

度肝を抜かれる映画。という映画で、私の中では『地獄の黙示録』というのがあるんですが、コレを超えてしまった映画を私は、この1ヶ月で2つも見てしまいました。

1つが『バンコクナイツ』ですが、今ひとつが本作です。

もうラストは、え?え?え?え?えーっ!?の連続で、もう言葉が追っ付きません!

韓国映画は今、世界高水準に達しているのではないのか?とすら言いたくなるような、驚天動地の作品。

 

f:id:mclean_chance:20170320194433j:image

 

 

 

渡瀬恒彦、松方弘樹追悼。

中島貞夫『実録外伝 大阪電撃作戦』

 

f:id:mclean_chance:20170316230437j:image

 

オープニングクレジットの写真を見てくださいよ(笑)!

ワルい顔ばっかりです!

 

f:id:mclean_chance:20170316230457j:image

 

深作欣二は、『仁義の墓場』というある意味行き着くところまで行き着いた実録ヤクザ映画を撮ってしまいました。

しかし、実録モノは、中島貞夫も撮っているんです!

しかも、渡哲也の弟、渡瀬恒彦が主役です!

冒頭のボクシングの観客のガラの悪さ(まあ、ヤクザが興行うってるんですが・笑)!

しかも、途中から松方弘樹と渡瀬恒彦が突然乱闘に。

 

f:id:mclean_chance:20170316230517j:image

 

いいですよね、見事に客を掴んで離さない展開です。

中島貞夫は、深作と違って、もっとヌメッとした画面作りで独特の暗さがあります。

簡単にお話の構図を申しますと、梅宮、渡瀬が所属する南原組に、成田三樹夫の大東組の勢力がキャバレーを出店するという、いわば、縄張り荒らしから始まる、大阪市を舞台とする、高度経済成長期におけるヤクザの抗争を描いた作品ですね。

 

f:id:mclean_chance:20170316230538j:image

彼こそが日本最大のヤクザの組長!

 

大東組には、神戸の川田組(若頭は小林旭で、組長は丹波哲郎です)がついており、いわば、神戸のヤクザが大阪への勢力拡大を狙ったものです。

基本的に、大阪のヤクザは、神戸の川田組を恐れており、できるだけ抗争を起こさないようにしているんですが、やはり、若いモンたちは、ガマンができない。

それが渡瀬や松方なわけですが、こっから先は言えねえ言えねえでござんす(笑)。

 

 f:id:mclean_chance:20170316230745j:image

 

先日、惜しくも亡くなった渡瀬恒彦ですが、最近はスッカリ十津川警部役のイメージが強いですが、渡瀬が演じる武闘派ヤクザは、渡とは違ったコワさがありますね。

彼の持ち味は、『仁義なき闘い』四部作では、今ひとつ発揮されていませんでしたが、ココでは、見事にキレるとアブナいヤクザを見事に演じてますね。

渡瀬が敵対する組の若頭であるこれまた先日亡くなってしまった松方弘樹(双竜会の若頭です)とのボクシングのシーンはいいですよねえ。

たしかに、菅原文太は圧倒的な存在感ですが、私は渡瀬恒彦に、とてもリアリティを感じました。

 

f:id:mclean_chance:20170316230845j:image

 

とにかく、黒いエネルギーに満ち溢れた見事な作品でした。

 

f:id:mclean_chance:20170316230849j:image

 

 

 

 

 

 

オリンピックってなんだっけ?

ヒュー・ハドソン炎のランナー

 

f:id:mclean_chance:20170307235024j:image

ヴァンゲリスの音楽と映像が一体化!

 

本作は戦後であり、そして、戦前でもある1924年のオリンピックパリ大会を描いた、実話に基づいたお話です。

ホントにジェントルマンシップが満ち溢れていた頃のオリンピックというものは、どういうものであったのか。という原点を確認したくなって久しぶりには見ました。

f:id:mclean_chance:20170308000658j:image

パリ大会のポスター。

 

ケンブリッジ大学に入学したハロルド・エイブラハムズは、入学早々、第一次世界大戦で亡くなった学生たちの名簿を見るのですが、実は相当数の学生が第一次大戦で亡くなっているんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170307235231p:image

実際のハロルド・エイブラハムズ。のちにスポーツジャーナリストとなります。

 

デイヴィッド・アテンボローの『素晴らしき戦争』という映画も、第一次大戦を描いた名作でした。

血みどろの戦闘シーンなど一切出てきませんが、近代戦争の虚しさ、恐ろしさが伝わってきます。

本作もフレッシュメンの晩餐会での学寮長のスピーチで、多くの戦死者を悼んでおりますね。

もう一方の主人公である、宣教師の息子として、北京で生まれたスコットランド人のエリック・リデル。

 

f:id:mclean_chance:20170307235449j:image

実際のエリック・リデル。彼は後に北京で布教を行なっているところを日本軍に捕まり、収容所で1945年に病死するんですね。。

 

彼はスコットランドでは俊足で有名なラグビー選手でした。

イギリス映画を見ていると、その英語の発音の美しさが魅力ですけども、イングランドスコットランドの英語は全く違いますね。

日本人には、スコットランドの英語のほうが聞き取りやすいですし、言葉遣いが明らかに優しいです。

 

f:id:mclean_chance:20170307235757j:image

布教をしながら走る、リデル。

 

イングランドは、なんでしょうか、京都のようなエゲツないものを感じますよね(笑)。

「いけずの精神」というのでしょうか。

 

f:id:mclean_chance:20170307235926j:image

ケンブリッジの名物行事で、恐るべき俊足ぶりを発揮するエイブラハムズ。

 

かたや、ケンブリッジ大学に行くほどのエリートのユダヤ人。

もう一方は、長老派のプロテスタントの宣教師の家に生まれた、純朴なラガーマンで、父の言いつけ通り、「神の栄光」のために短距離走の選手となります。

こういう、イギリス好きをうまいことくすぐる設定がニクいですよね。実話なんですけど。

個人的にはリデルの素朴な人柄に惹かれますが、ユダヤ教徒である事でイングランドでは差別されている事をエネルギーにしているエイブラハムズの闘志もまた素晴らしいです。

 

f:id:mclean_chance:20170308000130j:image

こんなですけども、国際的な大会だったりします。テレビもラジオもありません。

 

1920年代の陸上競技を忠実に再現しているんでしょうけども、ビックリするほど素朴で、その辺のグランドみたいなところで、スコットランド代表とフランス代表の試合がおこなれているのが面白いですね。

そういえば、テレビはないし、ラジオだってまだまだ普及しきっていない時代で、 電報とか電話が最新の通信機器なんですよね。

わずか100年ほどで私たちの生活は驚くほど変わってしまったんですね。

それにしても、全編に漂う高潔な精神。

そして、浮つかず、落ち着き払った絵作りが素晴らしい。

 

f:id:mclean_chance:20170308000402j:imagef:id:mclean_chance:20170308000418j:image

サークルの勧誘というのは、この頃の大学もやってるんですね。

 

f:id:mclean_chance:20170308000438j:image

 オペレッタ「ミカド」の上映シーン。当時、欧米では大変人気がありました。

 

エイブラハムズとリデルの初の対決は1923年のロンドンでのイングランドスコットランドの対決。

ここでは、リデルが勝ちます。

しかし、エイブラハムズは、マサビーニをコーチとして、フォームの改造を行います。

今となっては当たり前の事ですけども、この事が「アマチュアニズムに反する」として、ケンブリッジ大学の不興を買うことになります。

さて、そんなこんなで1924年のパリ大会(日本も参加しております!)リデル、エイブラハムズはともに英国代表に選ばれますが、思わぬ事態が訪れるのですが、コレは見てのお楽しみです。

陸上競技は、事実上、イギリスとアメリカの対決になるんですけども、さてどうなるのかは是非とご覧ください。

英国の権威主義や保守的なところがとても出てくる映画なのに、見終わった後にはそんなことはきれいサッパリ忘れてしまって、ココロには清々しさばかりが残る名作。

 

f:id:mclean_chance:20170308000619j:image

 

f:id:mclean_chance:20170308000634j:image 

 

ストーリーは言えねえ言えねえ。

パク・チャヌク『OLDBOY』

 

f:id:mclean_chance:20170305215956j:image

復讐の鬼と化す、オ・デス。

 

狩撫麻礼の原作を韓国の映画監督が映画化。

昔だったら、こんな事考えられなかったけども、それだけ日本の文化が韓国でも受け入れられているんですね。

とにかく驚きの連続。

15年間も一体どういう理由なのかもわからず監禁されている主人公オ・デスの描写が延々と続く冒頭からして、どういう話しなのかすらわからないという凄さ。

コレだけで20分近くを使って観客を宙ぶらりんにしてしまうんですね。

監禁されているうちに、妻を殺した容疑者にされています。

テレビのニュースで見るんですね。

監禁。ではあるのですが、テレビも自由に見ることができて、食事などもすべて充分ニュース揃っています。

しかし、理由が一切不明です。

コレは、普通はこわくてできませんが(客が我慢できなくなって怒るからです)、見事に引っ張ります。すごいですねえ。

しかも、なぜか呆気なく解放され、携帯と現金まで渡されるんです。

なぜ監禁されたのかが、一切わからない、『モンテ・クリスト伯』です。

 

f:id:mclean_chance:20170305220259j:image

なぜか一緒に行動を共にする板前さん。

 

デスは監禁場所を驚くべき方法で探し出し、復讐を開始するのですが、この辺はタランティーノの影響を感じますね。

バイオレンス描写の振り切れ具合も凄まじいですが、すごすぎてちょっと笑えてもくるのですが。

 

f:id:mclean_chance:20170305220213p:image

 

話しの要所要所に、オ・デスを知っている者が突然出てくるのが、どこかデイヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』のようですが、フィンチャーよりも表現が痛々しいですね。

なぜ、監禁が15年なのか。はだんだんと明らかになっていくのですけども、これは言うわけにはいきません。

とにかく、驚きの映像表現の連発でございます。必見!

 

f:id:mclean_chance:20170305220241j:image