國村隼、コワい!!!!

ナ・ホンジン『哭声』

 

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 娘にカーセックスを見られてしまう、しがない田舎の警察官が主人公なのだ(笑)。

 

國村隼が褌一丁で森の中を走っている映画!

私が本作について知っていたのは、それだけです(笑)。

それにしても、見終わった後、全く言葉がないですね。

お話は、「コクソン」(谷城)という韓国のかなりの田舎町で起こる不可解な連続殺人事件から始まるのですが、これの操作に当たって地元の警察官である、ちょっと太っちょのさえない中年が主人公なのが驚きですよね。

 

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とにかくすさまじい現場なのだ。

 

この事件はどれもこれも異様でして、被害者の殺害のされ方も尋常ではありません。

しかし、コレが、山に1人で住みついている、得体の知れない日本人(コレが國村隼です)が関係しているのでないのか?

 

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登場人物としての名前すらない國村隼

得体の知れない日本人。という事以外は何もわからないという。。

 

という事になり始めてから、ダンダンストーリーがホントに怖くなってきます。

前半は、かなりコミカルで笑えるんですが、それが笑っていいのかどうなのかわからなくなってきて、それがやがて、全く笑えなくなってくるんですね。

 

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ついに、國村隼と対峙!

 

どのようにそうなっていくのかが面白いので、一切言えませんが、一体どうなるの、このお話し。というのが最後の最後までわかりません。

 

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 娘のために懸命に戦うお父さん!

 

主演のお父さんが必死で家族を守るために、戦う姿は、ものすごい熱演ですが、それを超えるのが、娘さんですよね。

韓国の子役は、ここまですごいのか!と心底驚きました。

そして、ホントにコワい國村隼!!!

 

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中盤の山場ですが、何のシーンかは言えません!

 

この映画、多分、世界の主要な映画祭の賞をかなりとりそうですが、國村隼とこの女の子は間違いなく受賞ものです。

 

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この前半に出てくる女性が後に重要になってきます。

 

それにしても、脚本がべらぼうにすごです。

2時間半にも及ぶ大作を全く飽きさせずに見せてしまう力量は、並外れています。

 

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 何のシーンなのかは言えません!

 

度肝を抜かれる映画。という映画で、私の中では『地獄の黙示録』というのがあるんですが、コレを超えてしまった映画を私は、この1ヶ月で2つも見てしまいました。

1つが『バンコクナイツ』ですが、今ひとつが本作です。

もうラストは、え?え?え?え?えーっ!?の連続で、もう言葉が追っ付きません!

韓国映画は今、世界高水準に達しているのではないのか?とすら言いたくなるような、驚天動地の作品。

 

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渡瀬恒彦、松方弘樹追悼。

中島貞夫『実録外伝 大阪電撃作戦』

 

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オープニングクレジットの写真を見てくださいよ(笑)!

ワルい顔ばっかりです!

 

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深作欣二は、『仁義の墓場』というある意味行き着くところまで行き着いた実録ヤクザ映画を撮ってしまいました。

しかし、実録モノは、中島貞夫も撮っているんです!

しかも、渡哲也の弟、渡瀬恒彦が主役です!

冒頭のボクシングの観客のガラの悪さ(まあ、ヤクザが興行うってるんですが・笑)!

しかも、途中から松方弘樹と渡瀬恒彦が突然乱闘に。

 

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いいですよね、見事に客を掴んで離さない展開です。

中島貞夫は、深作と違って、もっとヌメッとした画面作りで独特の暗さがあります。

簡単にお話の構図を申しますと、梅宮、渡瀬が所属する南原組に、成田三樹夫の大東組の勢力がキャバレーを出店するという、いわば、縄張り荒らしから始まる、大阪市を舞台とする、高度経済成長期におけるヤクザの抗争を描いた作品ですね。

 

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彼こそが日本最大のヤクザの組長!

 

大東組には、神戸の川田組(若頭は小林旭で、組長は丹波哲郎です)がついており、いわば、神戸のヤクザが大阪への勢力拡大を狙ったものです。

基本的に、大阪のヤクザは、神戸の川田組を恐れており、できるだけ抗争を起こさないようにしているんですが、やはり、若いモンたちは、ガマンができない。

それが渡瀬や松方なわけですが、こっから先は言えねえ言えねえでござんす(笑)。

 

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先日、惜しくも亡くなった渡瀬恒彦ですが、最近はスッカリ十津川警部役のイメージが強いですが、渡瀬が演じる武闘派ヤクザは、渡とは違ったコワさがありますね。

彼の持ち味は、『仁義なき闘い』四部作では、今ひとつ発揮されていませんでしたが、ココでは、見事にキレるとアブナいヤクザを見事に演じてますね。

渡瀬が敵対する組の若頭であるこれまた先日亡くなってしまった松方弘樹(双竜会の若頭です)とのボクシングのシーンはいいですよねえ。

たしかに、菅原文太は圧倒的な存在感ですが、私は渡瀬恒彦に、とてもリアリティを感じました。

 

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とにかく、黒いエネルギーに満ち溢れた見事な作品でした。

 

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オリンピックってなんだっけ?

ヒュー・ハドソン炎のランナー

 

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ヴァンゲリスの音楽と映像が一体化!

 

本作は戦後であり、そして、戦前でもある1924年のオリンピックパリ大会を描いた、実話に基づいたお話です。

ホントにジェントルマンシップが満ち溢れていた頃のオリンピックというものは、どういうものであったのか。という原点を確認したくなって久しぶりには見ました。

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パリ大会のポスター。

 

ケンブリッジ大学に入学したハロルド・エイブラハムズは、入学早々、第一次世界大戦で亡くなった学生たちの名簿を見るのですが、実は相当数の学生が第一次大戦で亡くなっているんですね。

 

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実際のハロルド・エイブラハムズ。のちにスポーツジャーナリストとなります。

 

デイヴィッド・アテンボローの『素晴らしき戦争』という映画も、第一次大戦を描いた名作でした。

血みどろの戦闘シーンなど一切出てきませんが、近代戦争の虚しさ、恐ろしさが伝わってきます。

本作もフレッシュメンの晩餐会での学寮長のスピーチで、多くの戦死者を悼んでおりますね。

もう一方の主人公である、宣教師の息子として、北京で生まれたスコットランド人のエリック・リデル。

 

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実際のエリック・リデル。彼は後に北京で布教を行なっているところを日本軍に捕まり、収容所で1945年に病死するんですね。。

 

彼はスコットランドでは俊足で有名なラグビー選手でした。

イギリス映画を見ていると、その英語の発音の美しさが魅力ですけども、イングランドスコットランドの英語は全く違いますね。

日本人には、スコットランドの英語のほうが聞き取りやすいですし、言葉遣いが明らかに優しいです。

 

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布教をしながら走る、リデル。

 

イングランドは、なんでしょうか、京都のようなエゲツないものを感じますよね(笑)。

「いけずの精神」というのでしょうか。

 

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ケンブリッジの名物行事で、恐るべき俊足ぶりを発揮するエイブラハムズ。

 

かたや、ケンブリッジ大学に行くほどのエリートのユダヤ人。

もう一方は、長老派のプロテスタントの宣教師の家に生まれた、純朴なラガーマンで、父の言いつけ通り、「神の栄光」のために短距離走の選手となります。

こういう、イギリス好きをうまいことくすぐる設定がニクいですよね。実話なんですけど。

個人的にはリデルの素朴な人柄に惹かれますが、ユダヤ教徒である事でイングランドでは差別されている事をエネルギーにしているエイブラハムズの闘志もまた素晴らしいです。

 

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こんなですけども、国際的な大会だったりします。テレビもラジオもありません。

 

1920年代の陸上競技を忠実に再現しているんでしょうけども、ビックリするほど素朴で、その辺のグランドみたいなところで、スコットランド代表とフランス代表の試合がおこなれているのが面白いですね。

そういえば、テレビはないし、ラジオだってまだまだ普及しきっていない時代で、 電報とか電話が最新の通信機器なんですよね。

わずか100年ほどで私たちの生活は驚くほど変わってしまったんですね。

それにしても、全編に漂う高潔な精神。

そして、浮つかず、落ち着き払った絵作りが素晴らしい。

 

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サークルの勧誘というのは、この頃の大学もやってるんですね。

 

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 オペレッタ「ミカド」の上映シーン。当時、欧米では大変人気がありました。

 

エイブラハムズとリデルの初の対決は1923年のロンドンでのイングランドスコットランドの対決。

ここでは、リデルが勝ちます。

しかし、エイブラハムズは、マサビーニをコーチとして、フォームの改造を行います。

今となっては当たり前の事ですけども、この事が「アマチュアニズムに反する」として、ケンブリッジ大学の不興を買うことになります。

さて、そんなこんなで1924年のパリ大会(日本も参加しております!)リデル、エイブラハムズはともに英国代表に選ばれますが、思わぬ事態が訪れるのですが、コレは見てのお楽しみです。

陸上競技は、事実上、イギリスとアメリカの対決になるんですけども、さてどうなるのかは是非とご覧ください。

英国の権威主義や保守的なところがとても出てくる映画なのに、見終わった後にはそんなことはきれいサッパリ忘れてしまって、ココロには清々しさばかりが残る名作。

 

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ストーリーは言えねえ言えねえ。

パク・チャヌク『OLDBOY』

 

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復讐の鬼と化す、オ・デス。

 

狩撫麻礼の原作を韓国の映画監督が映画化。

昔だったら、こんな事考えられなかったけども、それだけ日本の文化が韓国でも受け入れられているんですね。

とにかく驚きの連続。

15年間も一体どういう理由なのかもわからず監禁されている主人公オ・デスの描写が延々と続く冒頭からして、どういう話しなのかすらわからないという凄さ。

コレだけで20分近くを使って観客を宙ぶらりんにしてしまうんですね。

監禁されているうちに、妻を殺した容疑者にされています。

テレビのニュースで見るんですね。

監禁。ではあるのですが、テレビも自由に見ることができて、食事などもすべて充分ニュース揃っています。

しかし、理由が一切不明です。

コレは、普通はこわくてできませんが(客が我慢できなくなって怒るからです)、見事に引っ張ります。すごいですねえ。

しかも、なぜか呆気なく解放され、携帯と現金まで渡されるんです。

なぜ監禁されたのかが、一切わからない、『モンテ・クリスト伯』です。

 

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なぜか一緒に行動を共にする板前さん。

 

デスは監禁場所を驚くべき方法で探し出し、復讐を開始するのですが、この辺はタランティーノの影響を感じますね。

バイオレンス描写の振り切れ具合も凄まじいですが、すごすぎてちょっと笑えてもくるのですが。

 

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話しの要所要所に、オ・デスを知っている者が突然出てくるのが、どこかデイヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』のようですが、フィンチャーよりも表現が痛々しいですね。

なぜ、監禁が15年なのか。はだんだんと明らかになっていくのですけども、これは言うわけにはいきません。

とにかく、驚きの映像表現の連発でございます。必見!

 

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渡哲也が破滅的なヤクザを凄絶に演じる。

深作欣二仁義の墓場

 

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仁義なき戦い』の大ヒットを受けて作られた、東京実録ヤクザ作品。

戦後の闇市(ここでは新宿の闇市です)を舞台とするヤクザの抗争であり、キャスティングも一部かぶります。

しかし、本作が『仁義なき戦い』ほど持ち上げられないのは、今ひとつキャラクターの魅力に欠ける事と、ユーモアやギャグの要素が入り込む余地のないガチすぎる展開が、どこか潤いが不足している事ですね。

 

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GHQからの物資を闇市横流しして儲けようとするハナ肇

 

仁義なき戦い』のハードな部分をグッと濃縮したようで、今見てもかなりキツめです。

菅原文太演じる広能は、金子信雄を殺そうとはしませんが、本作の
渡哲也は、親分であるハナ肇に重傷を負わせて服役し、刑務所内でも命を狙われるという、容赦のない展開です(実際の石川力夫がそういう人物だったんですね)。

 

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潜伏先の大阪で、ヘロイン中毒となる渡哲也。

 

また、主人公がヘロイン中毒で荒みきっている、破茶滅茶な人物なので、バイオレンスシーンが凄まじいですよね。

人によっては、『仁義なき戦い』よりもこっちがいいという人もいるでしょう。

私は、「広島死闘編」が好きなので、どうしても本作を行き過ぎと感じてしまうのですが。。

渡哲也は、撮影中にかなり体調を崩してしまい、その顔色の悪さがそのまんま画面に映っているのもこわいですね。

ラウォール・ウォルシュ『白熱』のような、一切の情緒を拒絶したような作品です。

 

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 誰1人として感情移入できる人物がいないという凄さ。

 

 

 

 

偉大な芸術家の死を悼む。

鈴木清順ツィゴイネルワイゼン

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死人のようなのに、一番元気に動き回る、原田芳雄

 

初めて見た時の衝撃は未だに忘れられないですね。

初めて見た清純の作品は『けんかえれじい』で、高橋英樹のほとんど初主演くらいの作品だったと思いますが、はち切れんばかりのエネルギーの通奏低音に、軍部の台頭という、暗い世相が描かれている傑作で、恐らくは清純監督自身の青春時代が反映した作品なのでしょう。

コレに対して、『ツィゴイネルワイゼン』はたまげました(笑)。

一見、同じ監督とは思えないほどにアナーキーデカダンで死の匂いが全編に充満した、とても異様な作品で、こんなの見たことがない(笑)。

 

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大正デカダンを独自の視点で蘇らせる手腕が素晴らしい。

 

戦前の有閑階級のお話しで、やたらとメシを食っているシーンばかりが出てきて(コレがやたらとう美味そうなんです)、あくせく働いている気配が全くなく、登場人物は何だかみんな生きていないような気配すらする。

 

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この器の配置もなんとも異様です。

 

いつ、どこかのかはあんまりハッキリしないですけども、大正時代なのでしょう。

セリフに「ハイフェッツを聴きにいった」とあるのですが、関東大震災はお話の中で起きていないようなので、1917年の出来事ですし、大谷直子演じる原田の奥さんが亡くなる原因であるスペイン風邪の流行は1918〜19年なので、つじつまが合う事は合うのですが。

この、いつどこだかもハッキリしないし(後半になればなるほどそうなっていきます)、登場人物がまるで幽霊みたいで、一応、時間の経過はあり、ストーリーもしっかりあるんですが(笑)、全体的な印象はとても夢幻的で、悪夢的という、もう清純にしか撮り得ない、全く独特の世界になっています。

日活時代の清純は、言ってしまえば、小林旭宍戸錠といった、日活のアクションスターを主人公にしたプログラム・ピクチャーの映画監督でしたから、ここまでぶっ飛んだ映画は撮っていませんでした。

しかし、そのような映画の中で、「清純的美学」としか言いようのない映像が必ず挿入されていて、他の日活映画とは明らかに違うものを放っていました。

本作は、日活を解雇されて、全く映画が撮らなくなってしまった苦境からようやく脱出できたという開放感を、一挙に爆発させた、いわば、清純美学のみで撮られた、極めて純度の高い作品といえ、清純作品の中でもとりわけ異彩を放っているものと思われます。

この清純のイメージを忠実に再現した木村威夫の美術のすごさは、やはり、特筆すべきで、原田芳雄の家に招かれた藤田敏八が一緒に食べている牛鍋に「ドチャッ」という異様に強調された音とともに鍋に乗せられるちぎりこんにゃくや、藤田の妻の役を演じる大楠道代が腐りかけた水蜜桃を食べるシーンなど、生理にまで訴えかけてくる言い知れない不気味さを見事に演出しておりますね。

 

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食べるシーンがそのままエロスとタナトスを想起するというのは、日本映画ではほとんど見られませんね。

 

思うに、鈴木清順が大正時代にものすごい執着を持って映画を撮っていたのは、あまり、前後の日本が好きではなかったのだろうと思うんですね。

なんでも合理的で効率がよくなっていって行くことにとても嫌悪感があったのではないか。

なので、モダニズムとプレモダニズムが混交していた大正時代への愛着を映像化し続けたんではないかと。

ただ、その執着というか、妄想が他の誰とも違っていて、あまりに独特なものですから、私たちは度肝を抜かれてしまうんですけども(笑)、清純が私たちに見せてくれる、幻惑の美に私は酔いしれるばかりです。

 

また、明らかに、ブニュエル『アンダルシアの犬』、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『情婦マノン』の引用があります。

 

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ハイ、同じですね。

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適当な映像が見つからなかったのですが、原田芳雄大楠道代をこのように担ぐシーンがありますよね?

 

元気のいい死者/死んだような生者を演じる原田芳雄の役(明らかに薬物中毒です)はある意味、これまで彼が演じたきた無頼漢のヴァリエではあり、定番ではありますけども、藤田敏八が演じる静かな狂気をたたえたドイツ語の教授
がより素晴らしいですね。

 

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映画監督としても素晴らしい業績をのこした藤田敏八。俳優としても活躍しました。

 

原田芳雄がいつものさすらいをしている最中に唐突に死んでしまってからの展開は、もう鈴木清順の独断場。

 

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こういう唐突なシーンがフト油断していると、パッと挿入されて驚くんですよね。参ります。

 

いやー、またしてもトコトン堪能させていただきました。合掌。

 

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またしても映画ではないですが(笑)。

渡辺信一郎『カウボーイ・ビバップ

 

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タイトルからして、好きなものを2つ組み合わせるという「お子さまランチ感」が満点だ。

 

とにかく唖然とするほど、好きなものをぶっこむだけぶっこんでいる、この圧倒的な情報量。

ブルース・リータランティーノジョン・ウー松本零士深作欣二、ペキンパー、松田優作などなど。

毎回のお話を精緻に分析していけば、もう数限りなく膨大なテクストの引用がありますね。

ストーリーの大半が本筋と関係のない逸脱であるというすごさ(であるがゆえに情報量がものすごい)。

しかし、それを絶妙なバランスでミックスされたスタリリッシュさ。

非常にまとまりが悪い作品だと思いますけども(笑)、それが魅力になっているという稀有な作品。

渡辺信一郎は、『サムライチャンプルー』にも言えますけども、主要キャラが圧倒的に立っていて、それでストーリーが自然に動いてしまうというか、いかにこのキャラクターを使って逸脱していくか。を楽しんで作っているようです。

 

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宇宙船「カウボーイビバップ」の面々。元警官、元ヤクザ、冷凍保存されていた人、天才ハッカーと天才犬による珍騒動が基本。

 

そして、そのなんでも放り込んでいく世界観を見事に再現していく、圧倒的な画力には心底驚きます。

多分、コレに匹敵するものを考えると、ガイナックスが制作した『王立宇宙軍』くらいしか思いつきません。

今や、日本を代表する作曲家となった菅野よう子のサントラの出来栄えは、ちょっと桁外れですね。

今堀恒雄菊地成孔という、日本でもトップクラスのミュージシャンを起用して作られたサントラのハイブラウ感は、とてつもないです。

とにかく、過剰なまでのクオリティをテレビアニメという枠から溢れ出すような勢いで作ることができたのは、『王立宇宙軍』と同じく監督第1作であったというのが大きいのでしょうね。

好きなもの、やりたい事を全部放り込んで、後は野となれ山となれ。という無謀なエナジーが全話にみなぎっていて、それは逸脱の会でも、主人公スパイクを中心としたシリアスな回でも同じ熱量というのがすごいです。

ルパン三世』以後、最もキャラクターを確立したアニメ作品だと思いますが、意外にスピンオフ作品やpart2のような形で制作される事がない作品ですが(映画版が1作だけ作られました)、恐らくは、もうこの熱量で作る事は監督はできないほどに打ち込んだという事なのかもしれません。

かのサンライズがロボットアニメ以外で作り上げた金字塔である。というのも、よく考えると衝撃的です。

 

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若いクリエイターたちのまっすぐな「大人ぶり」が眩しい。