イーデオーン。
今回は映画ではないのですが、それには少々説明が必要です。
と言いますのも、映画『伝説巨神 イデオン 発動篇』を見るためには、このテレビアニメの38話まで見る必要があるのです(笑)!
と言いますのも、この映画は、止むを得ず映画になったという経緯があります。
富野由悠季の『機動戦士ガンダム』で一大ブームが起こりまして、その次回作として大変、このアニメ作品は大変期待されておりましたが。
が、コレが『機動戦士ガンダム』を更に上回る低視聴率番組となり(ほぼ1%だったそうです)、なんと、最後の4話は放映せず、打ち切りが決定されました。
そこでやむなく強引に作られた第39話がテレビ放送の一応の完結となったのですが、実は『ガンダム』と同じく、この少数の視聴者がとても熱狂的に本作を支持しておりまして、「あの終わり方はなんだ!」「全然、謎の核心に迫ってないじゃないか!」と大変な批難の電話が放映していた当時の東京12 チャンネルに押し寄せたんです。
しかし、富野由悠季は更にその上を行っておりまして、キャラクターデザインと作画監督をしていた湖川友謙に、最後の4話分の原画をほとんど1人で描かせていました。
程なくして、この放映できなかった4話を劇場公開する。という、またしても『機動戦士ガンダム』と同じような事になってしまったんです。
ですので、この映画を見るためには、テレビ放映の最後の1話を除いた全てを見なくては、何の事だか全くわからない作品なんですね。
『機動戦士ガンダム』の3部作は、テレビ放映から作画の拙いところを修正したり、明らかに不要と思われるエピソードをカットして再編集したものなので、テレビを一切見なくても、映画だけ見ればわかるのですが、本作は、打ち切られた4話分なのですから、テレビ放映分を見ないと、もうどうしようもないんですね(笑)。
こんな映画上映は前代未聞ですし、これ以外では、『エヴァンゲリオン』以外には存在しないのではないでしょうか。
さて。本作が悲劇的に視聴者が低かった理由は、前半10話程の話しの展開に問題があります。
ソロ星。という地球人が植民を始めた惑星から話が始まるのですが、ココで秘かに、科学者たちが謎の遺跡を発掘調査している事が判明するんですね。
そして、それと同時に、バッフ=クラン。という異星人もこのソロ星(彼らはこの惑星を「ロゴ=ダウ」と呼び、地球人の事を、ずっと「ロゴ=ダウの異星人」と呼びます)に「イデの巨神」を捜索に来ていて、両者が遭遇してしまう事で、いきなり武力衝突になってしまうんです。
この「巻き込まれ型」の始まり方は、『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイが、なりゆきでガンダムを動かさざるを得なかったのと似ていますが、こちらは、100mはあるやたらと巨大なロボットで、主人公たちがどういう原理で動いているのかがわからないまんま(実は、最後までよくわからないまんま動かしています・笑)、手探りで動かしながら、異星人を撃退するんです。
コレがイデオン。全長100mほどのバカデカさです。
ロボットが発掘された異物であり、それを推定復元して、どうにか動かせるようにしている途中に襲撃を受けてしまった。という点で、『ガンダム』よりも切迫感が強く、そのための右往左往がソロ星の人々とバッフ=クラン側にかなり長い話数を費やさざるを得なかったので、明らかに見ていてイライラした視聴者が多かったのでしょう。
また、『ガンダム』のジオン軍のような魅力的なメカが全く出てないんですね。
『ガンダム』はお話しもよくできていましたが、大河原邦夫のメカデザインの素晴らしさによるところがとても大きい作品でしたが、本作の敵のロボットである、重機動メカがしばらく出て来ず、出てきたメカは、巨大なタコというかイカというか、何とも愛想のないメカばかりで、ほとんど感情移入が、イデオンを含めてほとんど不可能という(イデオンの振る舞いは要するに神そのものですし・笑)、致命的な問題がありました。
ギラン・ドゥという重機動メカ。理解し得ない異星人。という事をデザインでわからせる意図があったのでしょう。
また、登場人物が鉄火場状態でギスギスしているのも、なかなか感情移入しづらい。
イムホフ・カーシャ。地球人の名前は姓、名の順です。バッフ=クランは逆。
イラ・ジョリバ。技術関係を担当。
双方の膠着状態に、なんと、10話も使うという演出は、流石にやりすぎで、コレは視聴者から愛想を尽かされても仕方がなかったのではないでしょうか。
しかし、話でイデオンの力が突然目覚めてからは、作画に参加した天才板野一郎の力もあり、俄然面白くなってくるんですね。
この長い膠着状態についてこれた豪傑たちが、その後の爆発的に面白い展開を熱狂的に見ていたんです。
感情移入しづらかった人物たちも、だんだん状況が明らかになるにつれて、魅力的になってきます。
ユウキ・コスモが、主人公としての役割を果たすように次第に魅力的な存在になっていくのもストーリーが回転していく推進力となっていきます。
主人公ユウキ・コスモとアフタ・デク。
バッフ=クランも初めはアバデデ様という、今川義元感のある敵くらいしか出てこないんですけども(最初に後に重要なキャラクターが出てくるんですが、彼らがホントに活躍するのはもっと後になります)、彼をイデオンで倒してから、魅力的なキャラクターが出てくるんです。
アバデデ様。実は家族思いなのでした。
要するに、この話しの核になっている、「イデ」という謎の存在が如何に御し難く、それを偶然にも(実は偶然ではないことがだんだんわかってくるんですが)ソロ星で発見してしまい、それを手に入れてしまった事が、実は悲劇の始まりなのだ。という設定をするために、ものすご入れて話数をかけた事が問題なのですね。
アバデデ様の重機動メカ、ドグ=マック。
更にマズイことに、この間の作画
のクオリティ俄然かなり悲劇的でして(笑)、これも相当失望させれのでしょう。
しかし、コレは何か違う。何かあると感じたごく少数の人々がちゃんと見ていたというのは、富野由悠季という人の、やはり、並外れた神通力としか説明しようのない才気があったのでしょうね。
ほとんど内容に立ち入ることなくココまで進みましたが、こうでもしないとアニメ映画の金字塔に達する前に怒って見るのをやめてしまう事を恐れての事ですので、ご容赦を。
さて、映画版までの流れは実はものすごくシンプルでして、イデオンとソロシップを発掘して、ソロ星からはほうほうの体で脱出した、植民した人たちの生き残り人々は、ずっとバッフ=クランに執拗に追いかけ回され続けます。
イデの力によって動いているイデオン。何がこの力を発動させているのかは、映画版で明らかとなります。
その追いかけっこが延々続くというお話しなんですが、なぜなら、このイデオンとソロシップこそ、バッフ=クランが宇宙を探し回って手に入れようとしていた、彼らの伝承としての伝わる、「イデ」なのです。
ソロシップ。巨大なイデオンが難なく乗っかれるほど巨大な宇宙船。これもイデの力で動いている。発掘された時からソロシップ内部に植物が生い茂って動物がいるなど、謎だらけの宇宙船。
生存者たちは、そんな事はわかりません。
単に、異星人に追い回されていて、なんでなんだろう?と思うわけです。
しかし、それがなぜなのか?が、だんだんとわかってくるんですね。
それは、なりゆきでバッフ=クラン側の女性がソロシップで一緒に逃げることになったからです。
カララ・アジバ。という、バッフ=クランの名門貴族の出身で、父親のドバは最高司令官なのです。
カララ。姉のハルル、父のドバ総督とともに最重要キャラクター。
バッフ=クランが当初、探り探り、恐る恐る、地球人に接近するのは、このカララがソロ星に勝手に上陸してしまっているからで、この捜索、救出が、イデの奪還とともに重要であったのですね。
これが前述の膠着状態を生んでいたという、実はストーリーとしての必然性があったんです。
つまり、何をしに来たのか?とか「イデ」とい呼ばれる存在について、このカララから断片的ですが、聞くことができる事で、このイデオンがどうやら「イデ」の発動によってうごいていることや、この力をバッフ=クランは手に入れる事で、平和と繁栄を得る事ができるという伝承を信じていることを知るのです。
イデオンやソロシップについているゲージ。このマークが出ると、イデの力が発動している事を示している。
バッフ=クランは、ハッキリとは描かれていませんが、とてつもないテクノロジーを持ち、強大な軍事力を持った統一帝国で、かなり厳しい身分制社会であるらしく、絶対権力者の皇帝であるズオウを頂点とし、貴族、サムライ、平民、奴隷から構成されているようです。
バッフ=クランのサムライの1人、ギジェ・ザラル。第1話から登場する重要キャラクター。
この作品がすごいのは、バッフ=クランの全貌をほとんど描こうとせず(テレビバンでは名前くらいしか登場しませんが)、コスモたちをひたすら攻撃してきて、イデオンを奪い取ろうとする連中としてしか描いていない事です。
『ガンダム』は、連邦軍の官僚腐敗やジオン公国内部の権力闘争という内部事情がふんだんを盛り込まれた、とても重層的な世界観を持っているんですが、『イデオン』は極端なほどシンプルで、地球人とバッフがクランはひたすら憎み合い、すれ違い、殺し合い続けます。
しかも、ソロシップで逃げ回って居る人々は、地球から「迷惑だから帰ってこないでくれ!」と言われて、完全に孤立状態で逃げ回ります。
『ガンダム』は歴史劇なんですけども、『イデオン』は完全にSF作品です。
一見似てますけども、全く違う作品なのですね。
ココも見ていて面食らったところでしょうし、ココに気がついた人たちが見続けたと言えると思います。
なので、舞台の大半がソロシップと宇宙空間とたまに生物が生息して居る惑星に着陸するというだけしかないんですが、逃げ回っているソロシップは、けたはずれに巨大なイデオンを余裕で収容できるとほど巨大な宇宙船なので、『ガンダム』よりも乗っている登場人物がものすごく多彩勝手に多数になるので、1つのムラでの出来事がバッフ=クランとの戦闘以外はでは起きているので、日常シーンは実は確保できていて、思いの外、単調ではないのが見事です。
ソロシップの事実上の責任者、ジョーダン・ベス。地球人の主要人物では数少ない職業軍人。まあ、ブライト・ノアです(笑)。
しかも、この話しの最大の謎である「イデ」のサスペンスが話を引っ張るのがやはり見事です。
イデオンを発掘調査していた言語学者のフォルモッサ・シェリル。父親は、バッフ=クランの襲撃で殺されてしまう。
バッフ=クランの攻撃は当然のことながら、ドンドン厳しくなっていくのですが、なぜか、メインパイロットであるユウキ・コスモたちが次々と倒せてしまう(しかも、イデオンはドンドン強くなっでいくんですね)、普通に考えるととてもおかしいのですが、それが何故なのかは、映画版「発動篇」を見ると、すべてがわかるのです!
さあ、富野由悠季が自ら「最高傑作」と断言する作品を是非ともご覧くださいませ!
ロボットアニメ史上に残る、悪魔的な強さを誇るイデオンの波動ガンが炸裂!!
全身にミサイルを装備!!
https://youtu.be/lUBBVU28Hx4
https://youtu.be/yW5N92AOzQs
https://youtu.be/CeoVNn8o7xc
イーデオーン