コレを見ないと、映画版を見る事が出来ないのです!

富野由悠季『伝説巨神 イデオン』第1〜38話

 

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 イーデオーン。

 

今回は映画ではないのですが、それには少々説明が必要です。

と言いますのも、映画『伝説巨神 イデオン 発動篇』を見るためには、このテレビアニメの38話まで見る必要があるのです(笑)!

と言いますのも、この映画は、止むを得ず映画になったという経緯があります。

富野由悠季の『機動戦士ガンダム』で一大ブームが起こりまして、その次回作として大変、このアニメ作品は大変期待されておりましたが。

が、コレが『機動戦士ガンダム』を更に上回る低視聴率番組となり(ほぼ1%だったそうです)、なんと、最後の4話は放映せず、打ち切りが決定されました。

そこでやむなく強引に作られた第39話がテレビ放送の一応の完結となったのですが、実は『ガンダム』と同じく、この少数の視聴者がとても熱狂的に本作を支持しておりまして、「あの終わり方はなんだ!」「全然、謎の核心に迫ってないじゃないか!」と大変な批難の電話が放映していた当時の東京12 チャンネルに押し寄せたんです。

しかし、富野由悠季は更にその上を行っておりまして、キャラクターデザインと作画監督をしていた湖川友謙に、最後の4話分の原画をほとんど1人で描かせていました。

程なくして、この放映できなかった4話を劇場公開する。という、またしても『機動戦士ガンダム』と同じような事になってしまったんです。

ですので、この映画を見るためには、テレビ放映の最後の1話を除いた全てを見なくては、何の事だか全くわからない作品なんですね。

機動戦士ガンダム』の3部作は、テレビ放映から作画の拙いところを修正したり、明らかに不要と思われるエピソードをカットして再編集したものなので、テレビを一切見なくても、映画だけ見ればわかるのですが、本作は、打ち切られた4話分なのですから、テレビ放映分を見ないと、もうどうしようもないんですね(笑)。

こんな映画上映は前代未聞ですし、これ以外では、『エヴァンゲリオン』以外には存在しないのではないでしょうか。

さて。本作が悲劇的に視聴者が低かった理由は、前半10話程の話しの展開に問題があります。

ソロ星。という地球人が植民を始めた惑星から話が始まるのですが、ココで秘かに、科学者たちが謎の遺跡を発掘調査している事が判明するんですね。

そして、それと同時に、バッフ=クラン。という異星人もこのソロ星(彼らはこの惑星を「ロゴ=ダウ」と呼び、地球人の事を、ずっと「ロゴ=ダウの異星人」と呼びます)に「イデの巨神」を捜索に来ていて、両者が遭遇してしまう事で、いきなり武力衝突になってしまうんです。

この「巻き込まれ型」の始まり方は、『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイが、なりゆきでガンダムを動かさざるを得なかったのと似ていますが、こちらは、100mはあるやたらと巨大なロボットで、主人公たちがどういう原理で動いているのかがわからないまんま(実は、最後までよくわからないまんま動かしています・笑)、手探りで動かしながら、異星人を撃退するんです。

 

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コレがイデオン。全長100mほどのバカデカさです。

 

ロボットが発掘された異物であり、それを推定復元して、どうにか動かせるようにしている途中に襲撃を受けてしまった。という点で、『ガンダム』よりも切迫感が強く、そのための右往左往がソロ星の人々とバッフ=クラン側にかなり長い話数を費やさざるを得なかったので、明らかに見ていてイライラした視聴者が多かったのでしょう。

また、『ガンダム』のジオン軍のような魅力的なメカが全く出てないんですね。

ガンダム』はお話しもよくできていましたが、大河原邦夫のメカデザインの素晴らしさによるところがとても大きい作品でしたが、本作の敵のロボットである、重機動メカがしばらく出て来ず、出てきたメカは、巨大なタコというかイカというか、何とも愛想のないメカばかりで、ほとんど感情移入が、イデオンを含めてほとんど不可能という(イデオンの振る舞いは要するに神そのものですし・笑)、致命的な問題がありました。

 

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ギラン・ドゥという重機動メカ。理解し得ない異星人。という事をデザインでわからせる意図があったのでしょう。  

 

また、登場人物が鉄火場状態でギスギスしているのも、なかなか感情移入しづらい。

 

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イムホフ・カーシャ。地球人の名前は姓、名の順です。バッフ=クランは逆。

 

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イラ・ジョリバ。技術関係を担当。

 

双方の膠着状態に、なんと、10話も使うという演出は、流石にやりすぎで、コレは視聴者から愛想を尽かされても仕方がなかったのではないでしょうか。

しかし、話でイデオンの力が突然目覚めてからは、作画に参加した天才板野一郎の力もあり、俄然面白くなってくるんですね。

この長い膠着状態についてこれた豪傑たちが、その後の爆発的に面白い展開を熱狂的に見ていたんです。

感情移入しづらかった人物たちも、だんだん状況が明らかになるにつれて、魅力的になってきます。

ユウキ・コスモが、主人公としての役割を果たすように次第に魅力的な存在になっていくのもストーリーが回転していく推進力となっていきます。

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主人公ユウキ・コスモとアフタ・デク。

 

バッフ=クランも初めはアバデデ様という、今川義元感のある敵くらいしか出てこないんですけども(最初に後に重要なキャラクターが出てくるんですが、彼らがホントに活躍するのはもっと後になります)、彼をイデオンで倒してから、魅力的なキャラクターが出てくるんです。

 

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アバデデ様。実は家族思いなのでした。

 

要するに、この話しの核になっている、「イデ」という謎の存在が如何に御し難く、それを偶然にも(実は偶然ではないことがだんだんわかってくるんですが)ソロ星で発見してしまい、それを手に入れてしまった事が、実は悲劇の始まりなのだ。という設定をするために、ものすご入れて話数をかけた事が問題なのですね。

 

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アバデデ様の重機動メカ、ドグ=マック。

 

更にマズイことに、この間の作画

のクオリティ俄然かなり悲劇的でして(笑)、これも相当失望させれのでしょう。

しかし、コレは何か違う。何かあると感じたごく少数の人々がちゃんと見ていたというのは、富野由悠季という人の、やはり、並外れた神通力としか説明しようのない才気があったのでしょうね。

ほとんど内容に立ち入ることなくココまで進みましたが、こうでもしないとアニメ映画の金字塔に達する前に怒って見るのをやめてしまう事を恐れての事ですので、ご容赦を。

さて、映画版までの流れは実はものすごくシンプルでして、イデオンとソロシップを発掘して、ソロ星からはほうほうの体で脱出した、植民した人たちの生き残り人々は、ずっとバッフ=クランに執拗に追いかけ回され続けます。

 

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イデの力によって動いているイデオン。何がこの力を発動させているのかは、映画版で明らかとなります。

 

その追いかけっこが延々続くというお話しなんですが、なぜなら、このイデオンとソロシップこそ、バッフ=クランが宇宙を探し回って手に入れようとしていた、彼らの伝承としての伝わる、「イデ」なのです。

 

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ソロシップ。巨大なイデオンが難なく乗っかれるほど巨大な宇宙船。これもイデの力で動いている。発掘された時からソロシップ内部に植物が生い茂って動物がいるなど、謎だらけの宇宙船。

 

生存者たちは、そんな事はわかりません。

単に、異星人に追い回されていて、なんでなんだろう?と思うわけです。

しかし、それがなぜなのか?が、だんだんとわかってくるんですね。

それは、なりゆきでバッフ=クラン側の女性がソロシップで一緒に逃げることになったからです。

カララ・アジバ。という、バッフ=クランの名門貴族の出身で、父親のドバは最高司令官なのです。

 

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カララ。姉のハルル、父のドバ総督とともに最重要キャラクター。

 

バッフ=クランが当初、探り探り、恐る恐る、地球人に接近するのは、このカララがソロ星に勝手に上陸してしまっているからで、この捜索、救出が、イデの奪還とともに重要であったのですね。

これが前述の膠着状態を生んでいたという、実はストーリーとしての必然性があったんです。

つまり、何をしに来たのか?とか「イデ」とい呼ばれる存在について、このカララから断片的ですが、聞くことができる事で、このイデオンがどうやら「イデ」の発動によってうごいていることや、この力をバッフ=クランは手に入れる事で、平和と繁栄を得る事ができるという伝承を信じていることを知るのです。

 

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イデオンやソロシップについているゲージ。このマークが出ると、イデの力が発動している事を示している。

 

バッフ=クランは、ハッキリとは描かれていませんが、とてつもないテクノロジーを持ち、強大な軍事力を持った統一帝国で、かなり厳しい身分制社会であるらしく、絶対権力者の皇帝であるズオウを頂点とし、貴族、サムライ、平民、奴隷から構成されているようです。

 

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バッフ=クランのサムライの1人、ギジェ・ザラル。第1話から登場する重要キャラクター。

 

この作品がすごいのは、バッフ=クランの全貌をほとんど描こうとせず(テレビバンでは名前くらいしか登場しませんが)、コスモたちをひたすら攻撃してきて、イデオンを奪い取ろうとする連中としてしか描いていない事です。

ガンダム』は、連邦軍の官僚腐敗やジオン公国内部の権力闘争という内部事情がふんだんを盛り込まれた、とても重層的な世界観を持っているんですが、『イデオン』は極端なほどシンプルで、地球人とバッフがクランはひたすら憎み合い、すれ違い、殺し合い続けます。

しかも、ソロシップで逃げ回って居る人々は、地球から「迷惑だから帰ってこないでくれ!」と言われて、完全に孤立状態で逃げ回ります。

ガンダム』は歴史劇なんですけども、『イデオン』は完全にSF作品です。

一見似てますけども、全く違う作品なのですね。

ココも見ていて面食らったところでしょうし、ココに気がついた人たちが見続けたと言えると思います。

なので、舞台の大半がソロシップと宇宙空間とたまに生物が生息して居る惑星に着陸するというだけしかないんですが、逃げ回っているソロシップは、けたはずれに巨大なイデオンを余裕で収容できるとほど巨大な宇宙船なので、『ガンダム』よりも乗っている登場人物がものすごく多彩勝手に多数になるので、1つのムラでの出来事がバッフ=クランとの戦闘以外はでは起きているので、日常シーンは実は確保できていて、思いの外、単調ではないのが見事です。

 

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ソロシップの事実上の責任者、ジョーダン・ベス。地球人の主要人物では数少ない職業軍人。まあ、ブライト・ノアです(笑)。

 

しかも、この話しの最大の謎である「イデ」のサスペンスが話を引っ張るのがやはり見事です。

 

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 イデオンを発掘調査していた言語学者のフォルモッサ・シェリル。父親は、バッフ=クランの襲撃で殺されてしまう。

 

バッフ=クランの攻撃は当然のことながら、ドンドン厳しくなっていくのですが、なぜか、メインパイロットであるユウキ・コスモたちが次々と倒せてしまう(しかも、イデオンはドンドン強くなっでいくんですね)、普通に考えるととてもおかしいのですが、それが何故なのかは、映画版「発動篇」を見ると、すべてがわかるのです!

さあ、富野由悠季が自ら「最高傑作」と断言する作品を是非ともご覧くださいませ!

 

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ロボットアニメ史上に残る、悪魔的な強さを誇るイデオンの波動ガンが炸裂!!

 

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 全身にミサイルを装備!!

 

 https://youtu.be/lUBBVU28Hx4

 

https://youtu.be/yW5N92AOzQs

 

https://youtu.be/CeoVNn8o7xc

 

イーデオーン

 

 

 

 

 

 

本作をもって『仁義なき戦い』は完結です。

深作欣二仁義なき戦い 頂上作戦』

 

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警察の捜査を受ける打本組の事務所(タクシー会社なのですが)。

 

第4作。これまでは土着のヤクザとナアナアで癒着しきっていた警察も、抗争がエスカレートしてしまい、東京オリンピックを開催するという国際的な体面もあり、ついに「頂上作戦」という一斉検挙が始まるというところから物語が始まります。

 

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警察の検挙にやがて追い詰められていく広能

 

前作の最後の凄まじい銃撃戦が全国各地で起こってしまうと(要するに、山口組が広域暴力団化していんですね)、さすがに自○党もビビってしまったのでしょう。

しかし、それでも広島、呉の抗争は一向に収まらず、広能は山守組傘下の槇原組に常に命を狙われるような状態になってしまいます。

そこで、広能がもともと懇意にしている明石組の若頭の梅宮辰夫を介して、広島で賭博を中心に勢力を持つ義西会と連合する必要が出てきました。

この義西会の幹部として、第1作で死んでしまった松方弘樹が復活します。やはり、異様なまでにメイクが濃いです。肝硬変かと(笑)。

 

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 黒すぎ(笑)。

 

義西会の組長も、小池朝雄でコレも復活です(村岡組の幹部でしたが、第2作目で北大路欣也に殺されています)。

ややこしくなった抗争の構図をココでいっぺん整理しましょう。

この代理戦争は明石組と神和会の対立です。


明石組--打本組、川田組、広能組、義西会

神和会--山守組、武田組、槇原組、早川組、江田組


実際に対立しているのは、明石組と神和会のですが、コレが山守組と広能組とそれに伴う山守組系の槇原組との抗争という形で現れているんですね。

ココで、主人公である広能が、実は事実上、山口組の勢力拡大の最前線にいたという冷厳たる事実が分かるわけです。

要するに、主人公広能はヤクザ組織を巨大化させただけなんですね。。

当然、全体像は彼には見えていないですし、本人は生き残るためにやっていたに過ぎませんが、結局はそういう事なんですね。

滾る若いヤクザは、思いのままに、第1作の菅原文太のように暴れまわった結果、両陣営の幹部も続々と逮捕され、いずれも身動きが取れなくなっていきます。

遂に広能は暴行傷害罪。という広島県警による別件逮捕によって形勢は一挙に逆転し、広島、呉における神和会-山守組に覇権は確立したんですが残された広能組の組員が凶暴化し、暴れ回ります。

 

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遂に逮捕!それでも終わらないのがとても斬新ですね。司馬遼太郎を参考にしたのでしょうか。

 

更に義西会会長が殺害される事で、義西会、打本組、広能組の組長たちへの抑えが効かなくなっていくんですね。

未遂に終わりますが、とうとう山守組組長である、金子信雄まで襲撃を受けます(未遂に終わったのは、事前に打本が幹部のマイトガイ武田に密告したからです)。

 

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加藤武演じる打本の煮え切らない態度が終始、陣営を不利にしている。

 

と、ストーリーを追うのはもうやめますが、菅原文太がストーリーの中盤で逮捕されても話が続いていくという、この冷徹さが本作の素晴らしいところで、かつての東映では絶対にありえない事を連発したが故に、この大河ドラマは無類に面白いのでしょう。

前作と比べると、ストーリー展開がやや単調で、実録なので仕方がないのですが、菅原文太がいなくなってしまうと、俄然魅力が落ちてしまうのは止むを得ませんね。

本作をもってこの大河ドラマは、一応、終結といってよいのですが、ココから東映の悪いクセが出てきまして、この後も笠原和夫深作欣二が抜けながらも作り続けてしまいます。

菅原文太は、この事を後悔していたのでしょう、『トラック野郎』シリーズという、大変安定感のあるクオリティを持つ作品を第10作目をもってやめてしまいました。

そういう意味で、私も、本作をもって『仁義なき戦い』は完結したという事にしたいと思います。

 

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広島=怖い街。というイメージを決定づけましたよね(笑)。

 

 

 

 

ココからが本格的なお話になります。

深作欣二仁義なき戦い 代理戦争』

 

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高度経済成長期に入って、神戸のヤクザ明石組(つまり、山口組という事です)まで介入してきてますます抗争が複雑化しエスカレートしていく、第3作目。

本作は、呉港でしょうもないシノギしかできておらず、ジリ貧になっていた広能が山守組(経済ヤクザに変貌しております)に帰参する事となり、広島県のヤクザの抗争に戻ってまいります。

プロレスの興行などによって、ようやく舎弟を人並みに食わせる事が出来るようになり、次第に広能のもとにも暴れん坊が舎弟に入ってくるようにやります。

本作の特徴は一度死んでしまった役者が別な役で平然と復活するという、いかにも東映らしい大らかなお約束があるのですが、第1作で亡くなった梅宮辰也、渡瀬恒彦は、それぞれ明石組の幹部、広能の舎弟として復活しております。

 

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梅宮辰夫がこのまんま家に帰ると、ム娘のアンナが怯えて泣いたそうです(笑)。

 

川谷拓三に至っては、第2作目で千葉真一と舎弟たちに銃ではちゃめちゃに撃たれて亡くなるという、村岡組の組員役だったのですが、コントは広能組の組員になっております。

いいですよね、こういうイージーさ。

凄絶で救いようのないヤクザ同士の殺し合いの話しなのですが、どこかユーモアがあるというか、笑えるシーンが毎回あって、こういう役者の使い回しも、そういうギャグなんでしょうね。

本作の序盤で笑えるのが、外国人レスラーに反則負けをした力道山をモデルにした思われるレスラーを広能がビール瓶で思い切り殴って血だらけにし、「好きな女、いくらでも抱かせてやるけえ、もういっぺん戦って来いや!」と気合を入れるシーンが、もうホントにおかしくて(笑)。

 

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この暴力的なのにキャッチーというのが、菅原文太の素晴らしさです。

 

ビール瓶で頭を殴るタイミングがホントに絶妙なんですよ。

菅原文太はホントに喜劇の才能がありますよね。

ドジを踏む舎弟に、「このクソバカたれが!」というのが広能の口グセなのですが、これもホントにおかしい(笑)。

 

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ほとんど桃さんです(笑)。

 

単なるバイオレンス作品じゃないところがこの作品のミソです。

何しろ、菅原文太の親分が金子信雄というのは、どう考えてもおかしいわけで(笑)。

村岡組組長が健康上の問題で引退するので、その跡目を継ぐのは、誰なのか?という問題が本作のテーマなのですが、当初は村岡の舎弟であり、打本組組長の打本昇になるであろうと見込まれており、彼との関係も深かった広能も(プロレス興行は打本のおかげで広能組も仕切れるようになったんですね)、打本を後継者にと考えていたのですが、彼が神戸どころか西日本に巨大な勢力を誇る明石組(山口組ですね)と関係を持つことに、村岡組の幹部たちの一部が反感が出てきたんですね。

 

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山守組と合同した村岡組の面々。マイトガイが山守組の若頭として後半台頭していきます。

 

そして、広能と村岡組の幹部たちは、山守組組長の金子信雄を後継者にと考えます。

文字だけ見るとそうでもないかもしれませんが、金子信雄広島県のドンて(笑)!

 

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打本を明石組幹部の前で侮辱する金子信雄。コレが後に一大抗争に発展してしまうのだ!

 

しかし、コレが必然的に様々な不満を誘発し、抗争に発展していくんですね。

山守組と旧村岡組の内部対立、山守組の少数派閥としての広能組の立ち位置、打本組を通じての、事実上の明石組の広島県への勢力拡大という、とても重層的な利害関係が出来上がっていて、全2作とは比べものにならないほど複雑な話しになっているんですね。

ですので、全体的にはアクションよりもそういう政治的な駆け引きが中心になりますから、比較的バイオレンスは少ないんですけども、それでも話し全体にみなぎるギラギラとしたエナジーが落ちないんですから、大したものです。

シンプルにドンパチが見たい人には、ちょっと不満かもしれませんけども、群像劇として、日本映画史上のトップクラスの作品だと思います。

前半のタメにタメを効かせた伏線が最後の「広島代理戦争」として大爆発するという構成は、ホントに見事です。

脚本家、笠原和夫の最高傑作でしょう。

日本の戦後史の闇で暗躍した山口組の勢力拡大。というテーマを、広島、呉のヤクザから見たという点も、この作品は実に興味深いですよね。

 

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本作のラスボスなのですが、ほとんど出てきませんし、セリフもなし。

そこがコワいわけです。何しろモデルの田岡一雄は公開時に生きてますからね。

 

 

菅原文太出番少なめですが、面白いです。

深作欣二『仁義なき闘い 広島死闘編』

 

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またしてもオープニングが原爆投下!

 

広島の村岡組と大友組のサグライフ&バイオレンスを中心に描く第2作。

深作欣二の演出は相変わらずハイヴォルテージで役者たちは実に嬉しそうに画面狭しと暴れ回っております。

アクションシーンは、明らかに前作よりもエスカレートしていて、とにかくすさまじく、キャメラワークのアングルの凝り方も、前作以上です。

広能組は港湾で細々と仕事をしているビンボな組でして(犬の肉を食っているほどです)、やむなく山守組の仕事を請け負う事で、この抗争に少しだけ関わる事になります。

今回は、村岡組が如何に広島市を牛耳っていくのか?がメインですので、菅原文太はあんまり出てきません。

しかし、その代わりに、大友組の組長を演じる、千葉真一がとりわけ躁病的なヤクザを演じておりまして、暴れたい放題です。

 

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楽しそうにやってますよね。

 

村岡組の組員を吊るし上げにして銃で嬉々として虐殺するシーンはかなりすさまじいです。

 

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川谷拓三を拷問の末、惨殺!

 

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 シリーズ屈指の惨殺シーン!

 

このシリーズでも屈指の残虐で凶暴な武闘派として、暴れまわり、とうとう逮捕されてしまい、大友組は壊滅してしまいます。

これと対照的なのが、村岡組の若衆、山中を演じる北大路欣也の愚直な狂犬ぶりが素晴らしいです。

 

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「人斬り以蔵」を演じる北大路欣也。村岡組の野望に使われる鉄砲玉を見事に演じました。

 

北大路は村岡組によっていいように利用されているだけの都合の良い道具でしかない姿を、見事に演じております。

北大路は決して演技がうまい役者とは言い難いですが、多分、本作で彼の体当たりの演技は畢生のものなのではないでしょうか。

また、全体をワザとザラザラとした質感の映像で撮影したキャメラも特筆すべきでしょう。

 

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村岡組は、山中のお陰で広島市の支配者となったのだが。

 

トランプ大統領就任を祝しまして。

ロバート・ゼメキスバック・トゥ・ザ・フューチャー3部作』

 

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ドナルド。という大統領が共和党から誕生したことを記念して(?)、かなり久しぶりに見たくなりました(注、前回は「ロナルド」でしたね)。

今見ると、マイケル・J・フォックスちゃんの可愛らしさが、たまらんですね。お年玉をあげたくなります。

後にわかることですが、実は、若年性のパーキンソン病がすでにこの作品の撮影中に発覚していて、part 2とpart3が余り間をおかずに公開されたのは、彼の病気の進行が進む前に撮影を終えてしまうためだったんですね。

最近は、治療のかいがあってか、俳優の仕事に徐々に復帰しているようで、よかったですね。

もう古典と言ってよい映画でしょうから、細かく説明する必要もないでしょうけども、タイムマシンを使って、1985年から1955年にアクシデントによってタイムスリップさせる事で起こるおかしさを見せることが主眼ですよね。

part1で一番アブないところは、主人公マーティ・マクフライの母親ロレインの高校時代に出くわしてしまって、母親が自分に好意を持ってしまうという所です。

そこをSFドタバタ風にして、なんとか父と母を恋人同士にすることに専念しつつ、なんとか1985年に戻るという事が主眼ですけども、実際、どうなんでしょうね、息子が突然高校生の頃の母親に出会ってしまう時の気持ちって。

コレは逆に娘が高校生の頃の父親に出会ってしまうという事ですが、コレはあくまでの娯楽に徹しているのでそこは掘り下げるよりもシチュエーションのおかしさにしかシチュエーション利用していませんけども、フロイト的にとても興味が出てきますよね。

娘は父親に似ますし、息子は母親に似ますから(中年以降はコレが入れ替わってくるのが不思議です)、間違いなく他人とは高校生の父/母は思わないでしょうね。

この作品でも、父ジョージはマーティが何者であるのかには全く興味を持ってませんけども、ロレインは、「カルヴァン・クライン」にねほりんぱほりんになっていきますね。

大林宣彦だったら、ココをもっともっと掘り下げていくんでしょう(そういう人間の生々しさには一切関わらないのが、スピルバーグと門下生のセオリーですね)。

あと、とてもイミシンなのは、この3部作で出てくるのは、1885年、1955年、1985年、2015年なんですけども、1960〜70年代がないんですよね。

ゼメキス、というか、スピルバーグとその門下生(そしてジョージ・ルーカスも加えていいと思いますが)には、公民権運動やヴェトナム戦争がないんです。

フィスティーズとエイティーズを3部作の中心に据えて、そこに西部開拓時代と軽くディストピアックな近未来をくっつけると、それは現在まで続く、「スピルバーグアメリカ史」ですよね。

スピルバーグは2016年に至るまで、この時代を映画にした事はありません。

ゼメキス監督はご存知のように『フォレスト・ガンプ』でアカデミー作品賞を取るわけですが、あそこには、やっぱり公民権運動などのアメリカ国内のドロドロは出てきませんし(フォレスト・ガンプの主観にはないのだ。という事でエクスキューズしてますよね)、ヴェトナム戦争の描き方は、『ディアハンター』や『フルメタル・ジャケット』、『ナシュヴィル』などを見てしまった後では、違和感があります。

part 1に何気なく「ジョン・F・ケネディって誰だ?」というセリフが出てきますし、part 2でビフによって変えられてしまった歴史によって、ジョージ・マクフライが銃で殺されてしまうのも、1974年であるのは、偶然ではないですよね。

こう考えていくと、結構意味深いかもしれませんね。

 

アメリカの歴史は、1950年代から一挙に80年代につながれば最高に素晴らしい。なぜなら、この2つの時代はほとんどおんなじだから。というメッセージが、「ケネディは知らないけども「ロナルド・レーガン」はよく知っているというセリフからの実は如実に表れているような気がします。

また、マーティが演奏するチャック・ベリーの曲がやがてヴァン・ヘイレンになっていくことでも具体的に示していますよね(ここにもジミ・ヘンドリクスの意図的なオミットがあります)。

そして、その楽しい時代が2015年につながるとどうなるのか?

というところになってくるとだんだんと話はまことに物騒になって参りますので、この辺で(笑)。

頑張ってくださいませ、ドナルド大統領閣下。

 

追伸1
ロバート・ゼメキススピルバーグとは異なり、ジワリジワリと60〜70年代を描く方向に進んでおります。

1974年にワールドトレードセンターを綱渡りしたという、ローラン・プティの事件を2015年に『ザ・ウォーク』として映画化しております。

 

追伸2

作中で出てくる「ジゴワット」という単位はありません。

「ギガワット」の間違いですが、そんな事はどうでもいいのです(笑)。

 

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追伸3

なんと、スピルバーグワシントン・ポスト紙による、ニクソン政権への攻撃。という映画を撮りました!

大人になったんだなあ、スピルバーグも。しかも、いい映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タワーレコードへの愛に満ち溢れたドキュメンタリー。

Collin Hanks『All Things Must Pass』

 

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タワーレコードの栄枯盛衰記をひたすら草創期の人々の証言を中心に巧みに構成されたドキュメンタリー。

なんと、最初はドラッグストアの一角で、中古のシングル売ってたのが始まりだったんですね。

それが、アメリカ西海岸という、自由な環境な中でドンドン大きくなっていく様が実に生き生きと描写されていて、実に面白かったですね。

服装に一切決まりもなく、売れない頃のミュージシャンが結構働いていて(デイヴ・グロールはワシントンDC店の店員でした)、店員も二日酔いで働いていたり、事務所で寝泊まりしているような豪傑もいたようです。

ミュージシャンも多くきていたようで、中でもエルトン・ジョンはサンセット大通りにあるタワーレコードにデカイ車で乗り付けて、自宅用、別荘用に必ず2~3枚をセットにして買いまくり、とんでもない量のレコードを毎回買っていたようです。

 

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エルトン・ジョン

 

まあ、要するにヒッピーの溜まり場になっていて、ある種の水滸伝の豪傑みたいな人たちの坩堝だったんですね、当時のタワーレコードは。

 

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いやー、行きたかったなあ、この頃のタワーレコード

経理を担当している方がかなり現実的な人だったので、創業者ラス・ソロモンの梁山泊の頭目のようなあり方をうまくコントロールしていたようで、だからこそ、ビジネスでもちゃんと成功できていたようです。

とはいえ、この経理担当の方も、私生活は毎年スポーツカーを買っているようなド派手な生活してたみたいですけど(笑)。

やはり、日本への出店のくだりは、日本人としては興味深かったです。

回転とともに渋谷店にお客が押し寄せた映像は感慨深いものがあります。

この日本への進出が余りにもうまく言ったのが、タワーレコードを調子に乗せてしまったのでしょう、そこからの人々の証言が、儲け話ばかりになって言って、ドンドンつまらなくなっていきます。

 

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絶頂期のラス・ソロモン。

 

経理担当のバドがタワーレコードを辞めてしまい(数年後に亡くなります)、時代がインターネットへと移行していくと転げ落ちるようにタワーレコードの業績は悪化していき、正直見ていられなくないですね。辛い。

タワーレコードの転落はそのまま現在の音楽業界全体の危機であったので、どんなに堅実に経営していても、やはり、厳しい状況に置かれたのは、間違いないでしょう。

第1号店のサクラメント店が閉店するに辺りが店頭を飾ったのが、タイトルである「All Things Must Pass」だったんですね。

ロックファンの方でしたら、コレがジョージ・ハリスンの大作アルバム『All Things Must Pass』から取った事はすぐにわかると思いますけども、ラストにラス・ソロモンが日本のタワーレコード平和島の本社を訪れるシーンは、音楽好きには涙なくして見ることはできないでしょう。

 

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コレがタイトルの元となったジョージ・ハリスンのアルバム。

 

バックに流れていたのは、そのジョージ・ハリスンの「All Things Must Pass」でしたね。

実はこのアルバム、ビートルズ時代に作っていながら、ジョンやポールに反対されてアルバムに入れることができなかったものばかりでして、ビートルズ時代の無念を晴らしたアルバムとしても大変有名です。

LP3枚組にもかかわらず、なんと全米1位を獲得し、「My Sweet Lord」はシングルとして大ヒットしました。

今後、こういう録音された音楽がどのように聴かれていくのかは、私にはわかりませんが、「いい音楽を人々に分かち合っていく」という、ラス・ソロモンの思想は無くなることはないでしょう。

 

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今見ると、むしろ現実がこれに近づいている気が。

マーティン・スコシージ『タクシードライバー』

 

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このオープニングの映像が素晴らしい!

 

久しぶりに見ました。

最近のスコシージの作品は特に見る気は起きませんが、コレはホントにインパクトのある作品でしたたな。

今考えてみると、ヴェトナム戦争によるPTSDを描いた作品なんですよね、コレ。

冒頭の雨降る中をタクシーか真夜中のニューヨークを写した映像の美しさが素晴らしいですね。

ココにアルト・サックスソロがフィーチャーされた曲がかぶるのですが、ココがヘタすると1番好きかもわかりませんね。

恐らくは戦争体験が関係していると思いますが、不眠症になってしまったロバート・デニーロ演ずるトラヴィスは、夜も平気なので、ニューヨークでタクシードライバーになります。

 

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 ヴェトナム戦争から帰還した現実は厳しかった。

 

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休みの日にポルノ映画に行くくらいがトラヴィスの楽しみ。

 

26。という設定が今ではオドロキですよね。もっと年齢が上に見えます。

20代前半であの地獄を味わうという事は、もう一生忘れる事はできないでしょう。。

大統領選挙に立候補したパランタイン上院議員の事務所で働いている女性、ベツィ事が気になって、ヴォランティアしたいとかなんとかでまかせを言って、彼女に接近します。

 

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しかし、いかんせん、高校をドロップアウトしたような海兵隊出身者と選挙事務所で働いている大卒の女性では会話が今ひとつ噛み合うはずもなく。

 

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しかも、映画に誘うのですが、ポルノ映画(しかもイタリアのとりわけエグイやつです)に誘うという感覚。

まあ、どうしようもないですよね。。

スコシージ監督が黒人と不倫をしている奥さんを殺す。とトラヴィスに告白する男を演じているのですが、コレがイイですね。

 

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左がスコシージ監督。

 

とにかく、当時の荒んでいるニューヨークがやや戯画化されてスケッチ風に描写されているわけですけども(通りに売春婦がめちゃめちゃいますよ。多分、ホンモノを撮っているのでしょう)、そこで出会った、当時13歳のジョディ・フォースター演じる売春婦との出会いがこのお話しをあらぬ方向に変えていきます。

 

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 天才子役であったジョディ・フォースター。

 

ジョディ・フォースターは後にアカデミー主演女優賞を受賞しますが、もうこの頃からものすごい才能を発揮していますね。

70年代後半にニューヨークはパンクなどの強烈な音楽が生まれる事になりますが、この映画は、そういうエネルギーが弾ける直前を見事に表現していて、そういう意味で、本作は、パンク映画と言ってよいのではないでしょうか。

スコシージ本人は、ブルースとザ・バンドみたいなロックやジャズが好きな人なので、パンクなんて大嫌いでしょうけども、この頃のニューヨークを舞台にアタマのおかしくなった男が暴走する映画を撮れば、それはどうしたってパンクになってしまいますよね。

音楽がバーナード・ハーマンというヒッチコックとのコンビなどで大変見事な仕事をした人が担当しているんですけども、あのヒッチコック作品のイメージからすると、名前を伏せたら彼音楽とは分からないかもしれません。

正直、もう「過去の人」になりつつあるハーマンを起用したのは、スコシージが熱狂的なシネフィルで、ヒッチコックを溺愛していたからなのだと思いますが、ハーマンの仕事は、全盛期に匹敵する見事な仕事ぶりで、これが遺作です。

なんと、サントラをスタジオで録音して数時間後に亡くなったそうです。

ハーマンお得意の分厚いストリングスが作り出す不協和音が、アルトサックスの美しいソロへとつながっていくサントラは、70年代の映画でもベスト3に確実に入る傑作で、私はついついサントラも買ってしまいました。

この映画のコワいところは、なぜ、トラヴィスが突然たくさんの拳銃を購入して、身体を鍛え始めるのかが余り明確に説明していないことですね。

 

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妙に生き生きしだすトラヴィス

 

身体を鍛えて銃を撃つ訓練を始めたトラヴィスがこれまでのドンヨリとした表情から、妙に生き生きしてきているのが、なんともコワいですが、ニコニコしている人がコワい。というのは、デニーロが後に得意とするところではあります。

You talkin' to me ? と言いながら、自宅で袖に仕込み銃を隠しているのを何度も出すシーンはまことに異様です。

 

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You takin' to me ?

 

この映画、今見ると、突然単独で自爆テロや無差別に銃を乱射するテロリストの心理を描いているようにも見えますよね。

ハッキリ描いてませんけども、ヴェトナム戦争海兵隊員として戦い、名誉除隊しているにもかかわらず、彼がやっている仕事はしがないタクシードライバーです。

その不条理と社会へのルサンチマンは、現在の欧米に生活するムスリムの人々と変わらないでしょう。

それがなぜか、三島由紀夫もビックリな肉体改造になっていくのが、トラヴィスの異様さです。

軍隊生活の緊迫感がないと落ち着かなくなっているのでしょうね。

そういえば、顔色が良くなっているということは、不眠症も改善しているのでしょう。

 

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こんなデカい拳銃が手に入るというのはどうなんでしょうね。。

こういうトラヴィスのような男は、イラク戦争でも生み出されているらしく、多くの殺人事件が実際に起こっているという、ショッキングな報告があります。

奇しくも、本作も大統領選中のお話しというのが、これまたコワいわけですが。

このトラヴィスの暴走ぶりというか、パンクぶりが本作のヤマ場なのですが、それは見てのお楽しみです。

それにしても、70年代の最も治安の悪い頃のニューヨークのロケーションがとにかく見事で、これとバーナード・ハーマンの全盛期を思わせる素晴らしいサントラが本編の価値を相当に高めたことは、間違いないでしょう。

今見直すと、アメリカがこの頃から今日に至るまで、ドンドン荒んでいってることがよくわかる作品です。

 

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 脚本を担当したポール・シュローダーは後に『Mishima』を撮ります。

ミシマも身体をムキムキに鍛えて自衛隊の駐屯地を襲撃したわけですが。。